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【薬剤師監修】肝斑は内服薬で治せる?服用期間や注意事項、副作用は?

「最近、両頬に茶色っぽいシミができて気になる。」
そんな悩みを抱えている方は、もしかすると「肝斑」かもしれません。 肝斑はいわゆるシミと言われる老人性色素沈着とは少し治療法が異なります。

この記事では、肝斑の治療薬について解説します。

教えてくれたのは

薬剤師 藤原 智沙恵 さん

研修認定薬剤師、1児の母。
メーカーで化粧品・医薬部外品の研究開発職に従事し、スキンケア製品や衛生用品の開発に携わる。
薬事申請や2度の特許出願なども経験した後に、調剤薬局の薬剤師へと転職。
薬局で様々な皮膚疾患をもつ患者さんの服薬指導にあたり、さらに多くの人に正しい情報を発信していきたいという思いを持ち、医療・美容分野を中心に執筆活動を始める。
薬剤師やメーカー勤務時代に取得した化粧品成分上級スペシャリストの資格を活かし、化粧品成分の安全性や美容サプリメントの正しい服用方法などを伝える記事の執筆・監修に積極的に取り組んでいる。

肝斑とはなにか?

まずは、「肝斑」とはどのようなシミをさすのか、症状やその原因について解説します。

シミには実は複数ある

一般にシミと言われる症状は、医学用語では後天性のメラニン色素沈着症を指します。
シミは原因や症状別に細かく分けると、実は以下のように複数種類あります。

・老人性色素斑(日光黒子)
・肝斑
・雀卵斑(そばかす)
・両側性遅発性太田母斑(真皮メラノサイトーシス)
・炎症後色素沈着症

など

この中で最も多く、いわゆるシミと言われるのが老人性色素斑であり、一方で再発・難治性で治療に難渋するのが肝斑であるとされています*¹。

肝斑の症状

主に両頬に対して、左右対称にできる薄茶色の色素斑(シミ)です。
シミのない部分との境界がはっきりと明確である老人性色素斑に対して、肝斑はその境界が不鮮明でぼんやりとしていることが特徴です。
また肝斑は、30〜40歳代の女性で発症が多くみられますが、高齢者ではほぼみられません。閉経とともに薄くなったり、消えたりする傾向にあることが分かっています。

肝斑の治療では診断が重要で、特に両側性遅発性太田母斑(真皮メラノサイトーシス)との鑑別が難しいとされています。また、肝斑単独で存在するケースは比較的少なく、老人性色素斑など複数のシミが混合していることも多いです。
そのため、典型例を除くと専門医でなければ視診で診断をつけるのは難しいと言われています*¹。

肝斑の原因

肝斑の原因や発症メカニズムについては現在のところ、まだはっきりと分かっていません。しかし、肝斑は主に女性ホルモンや紫外線の影響により悪化することが分かっています。

◇女性ホルモン
女性ホルモンのバランスが乱れると、メラノサイト(メラニン形成細胞)が活性化されてメラニン色素の分泌が促進されます。妊娠、経口避妊薬の服用、ホルモン補充療法などによる女性ホルモンの変化により肝斑が悪化することから、肝斑が発症する主な要因ではないかと現時点では推測されています。

◇紫外線
紫外線が肌に当たると、ダメージから肌を守るために肌の内側で「メラニン」と呼ばれる黒褐色の色素が作られます。メラニンは通常、肌のターンオーバーと共に体外へ排出されますが、紫外線を浴び過ぎたり、ターンオーバーのサイクルが乱れたりすると表皮に過剰に蓄積されてしまいます。この過剰に蓄積されたメラニンが、シミの原因の一つになります。

肝斑はレーザー治療ができるの?

シミ治療は美容皮膚科でのレーザー照射が一般的ですが、肝斑の治療ではどうでしょうか。

肝斑のレーザー治療なら「レーザートーニング」

老人性色素斑などのシミ治療に広く使用されるQスイッチルビーレーザーは、高出力でレーザーを照射してメラニンを破壊します。効果が高い反面、治療により肌に強い炎症を伴うため、肝斑に使用すると症状が悪化することが知られていました。

一方で、“レーザートーニング”は、低出力のレーザー光を照射する施術方法です。

レーザー光が弱いため、肌に余分な刺激を与えずにメラニンにアプローチできます。回数を重ねるほどメラニン量は減っていくため、肝斑やシミ、そばかすといった色素沈着に効果が期待できます

レーザートーニングのデメリット

レーザートーニングで効果を得るためには複数回の施術が必要になります。 症状の程度にもよりますが、1〜2週間に1回のペースで合計5〜10回繰り返します。

そのため治療にかかる費用も、3〜10万円程度と高額です。

治療が合わない場合は症状の悪化や白斑のリスクがあるため、基本的には、内服薬・外用剤の使用で効果が不十分な場合の選択肢になります。

肝斑にはトラネキサム酸の内服薬が有効

現在、肝斑の治療にはトラネキサム酸の内服薬の服用が推奨されています。
ここではトラネキサム酸の働きと肝斑への効果についてご説明します。

トラネキサム酸とは

トラネキサム酸は、のどの痛み・腫れを抑える風邪薬や出血の予防・治療薬として広く用いられている医薬品です。
私たちのからだの中には、炎症を引き起こしたり、血小板の凝集を抑えて血を固まりにくくしたりする「プラスミン」という酵素が存在します。このプラスミンはメラノサイト(メラニン形成細胞)を活性化させてメラニンを生成する働きも合わせ持ちます。
トラネキサム酸は、プラスミンの働きを抑える作用があるために、抗炎症作用・止血作用に加えてメラニン生成抑制作用も示します。

また、私たちのからだの中には痛みや腫れなどの炎症反応を引き起こす「プロスタグランジン」という生理活性物質が存在します。プロスタグランジンは肌がメラニン色素を作るときに欠かせない物質ですが、トラネキサム酸にはこのプロスタグランジンの働きを抑える作用もあります。

トラネキサム酸の肝斑への効果

肝斑では、プラスミンが活性化してメラニン産生が亢進し、かつ真皮に炎症反応が生じている状態であることが分かっています。

トラネキサム酸は、
①抗プラスミン作用を介してメラニン産生を抑制する
②メラノサイト(メラニン形成細胞)に直接働きかけてメラニン合成を抑制する
③プロスタグランジン産生を阻害することによって抗炎症作用をもつ

などの作用によって肝斑を改善します*³。

トラネキサム酸の肝斑に対する臨床報告について

肝斑に対するトラネキサム酸内服薬の有効性および安全性について、ビタミンC製剤を対照薬とする多施設共同無作為化比較試験の報告があります*⁴。
この試験では、肝斑患者231例にトラネキサム酸またはビタミンC製剤のいずれかの薬剤を1回2錠、1日3回毎食後に8週間経口投与します。
肝斑の改善度をスキントーン・カラースケール(肌色カラースケール)で評価した結果、色素沈着の改善率はトラネキサム酸群で60.3%、ビタミンC群で26.5%となりました。
また自覚症状や画像診断においてもトラネキサム酸で有意に高い改善効果が得られ、安全性にも問題は認められなかったことが報告されています。

さらに別の臨床試験において、2010~2014年にアジア人の肝斑の患者561名(女性91.4%、男性8.6%)を対象にして行われた後ろ向き研究では、トラネキサム酸1日量500mgを経口服用したところ、治療期間の中央値4ヶ月で、89.7%の患者に改善が認められたという報告もあります*⁵。
このように、トラネキサム酸の内服は肝斑の治療に有効性が高いことが他の多くの臨床試験でも報告されています。

トラネキサム酸の飲み方は?

トラネキサム酸の飲み方と注意点についてご説明します。

服用量と服用期間

1日750〜1500㎎を1日3回毎食後に分割服用します。
トラネキサム酸の血中半減期は4時間前後と短いため、効果を得るにはこまめに3回に分けて継続して服用するのが理想です*⁶。
トラネキサム酸内服薬の場合、早ければおよそ4〜5週間頃から効果が現われはじめ、2ヶ月程度で肝斑の改善がみられます*⁷。

副作用

トラネキサム酸の副作用は、頻度は少ないですが、主に胃腸障害(食欲不振、悪心、嘔吐、下痢、胸やけなど)が報告されています。また、搔痒感や発疹・発赤などの皮膚症状が出る場合もあります*⁶。

併用してはいけない薬

トラネキサム酸は止血作用があるので、止血薬である「トロンビン」とは一緒に服用できません。両方を摂取することで、血栓が生じやすくなるためです。

また、経口避妊薬(ピル)の副作用の一つに血栓症があり、トラネキサム酸との併用で血栓症のリスクが上がることから併用は避けた方が良いでしょう。

服用してはいけない人

心筋梗塞、脳血栓、血栓性静脈炎などの血栓がある人、術後などで日中も寝た状態の人は、服用を避けます。また腎機能が低下している方はトラネキサム酸の血中濃度が高くなる可能性があるため服用する前に医師・薬剤師に相談しましょう。

トラネキサム酸の添付文書には妊娠・授乳中の注意喚起はありません*⁶。
しかし、妊娠中は血液凝固作用のあるエストロゲンの分泌量が上がることや、出産時の出血のリスクから身体を守るために血液凝固能が自然と上がることから、妊娠中・出産後は血栓症のリスクが高まります。そのため、トラネキサム酸の服用はできれば避けた方が良いでしょう。妊娠・授乳中に服用する場合は必ず主治医にご相談ください。

肝斑の治療薬でよくある質問

Q. 医療用医薬品と市販薬との違いは?

トラネキサム酸は、病院で医師の診察を受けて処方してもらう「医療用医薬品」と、ドラッグストアなどで購入できる「一般用医薬品(市販薬)」があります。
主な違いは以下の3点です。

・1日の上限量
トラネキサム酸は1日の上限量が市販薬では750㎎なのに対し、医療用医薬品では2000㎎になります。

・摂取可能な期間
医療用医薬品では添付文書上、摂取期間に制限は定められていません。
一方で市販薬の場合は、安全性を考慮して2ヶ月間内服したら、2ヶ月間中止しなくてはならないという注意書きがあります。

・含有されている成分の違い
医療用医薬品ではトラネキサム酸のみが配合されていますが、市販薬の場合はシミに有効なビタミンCやL-システインなどの複数の成分が配合されている場合が多いです。

医療機関では医師の監督のもと、1日1500㎎で2ヶ月以上服用するケースも見られるため、市販薬で肝斑が改善されない場合は医療機関を受診すると良いでしょう。

Q. 肝斑の治療は保険適用になるの?

肝斑に対する内服薬は、健康保険の適用外であり、自由診療(10割負担)になります。

Q. 服用をやめたら再発する可能性はあるの?

トラネキサム酸は、服用することでプラスミンやプロスタグランジンの働きを抑えて、肝斑を改善します。そのため、服用をやめるとこれら物質の働きが戻り、肝斑が再発する可能性があります。

Q.塗り薬で治療する場合もあるの?

肝斑の治療では、内服薬と併用してハイドロキノン、トレチノイン、グリコール酸、ビタミン Cなどの外用剤を使用する場合もあります。
特に4%(高濃度)ハイドロキノン外用剤は診療ガイドラインでも推奨されており、肝斑患者 48 人を対象として 4%ハイドロキノンの外用を 12 週間継続したところ高い改善率が認められたことが報告されています*²。

ただし、ハイドロキノンを使用中に強い紫外線を浴びると、シミが濃くなることがあります。使用中はUVケアを念入りに行い、できればSPF20以上の日焼け止めを使用しましょう。

正しい知識で肝斑治療を

肝斑は、いわゆるシミと呼ばれる”老人性色素斑”とは治療法が異なります。
典型例を除くと専門医でなければ診断をつけるのは難しく、肝斑が疑われる場合は、まずは医療機関の受診が推奨されます。

トラネキサム酸は、副作用の頻度も少なく安全性の高い治療薬ですが、ピルとの併用や妊娠中の服用で血栓症のリスクが高まるため、注意が必要です。
肝斑とその治療法について正しい知識をもつことで、安全で効果の高い治療法を選択できるでしょう。

【参考文献】
1)特別号美容医療診療指針(令和3年度改訂版), 全日本病院出版会 日本美容外科学会会報(2022)Vol. 44
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/biyo2v.pdf
2)形成外科診療ガイドライン1皮膚疾患 皮膚軟部腫瘍/母斑・色素性疾患(レーザー治療)(2015),金原出版株式会社
https://jsprs.or.jp/docs/guideline/keiseigeka1.pdf
3)川田暁,Bella Pelle Vol.2 No.1 2017–2,p24
https://publish.m-review.co.jp/files/tachiyomi_J0102_0201_0024-0026.pdf
4)川島眞, 川田暁, 滝脇弘嗣, 他. 肝斑に対するDH4243(トラネキサム酸配合経口薬)の多施設共同無作為化比較試験. 臨床皮膚科, 61: 735-43, 2007
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1412101753
5)Hwee Chyen Lee, Tien Guan Steven Thng, Chee Leok Goh (2016) “Oral tranexamic acid (TA) in the treatment of melasma: A retrospective analysis.” J Am Acad Dermatol. 75(2):385-92.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6247725/
6)トラネキサム酸錠250mg「日医工」添付文書
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00067950.pdf
7)第一三共ホームページ“皮膚科医が教える肝斑治療”
https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/site_kanpan/treatment/

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