APPSとは?他のビタミンC誘導体で効果がないと感じる理由についても解説
ビタミンC誘導体の一つであるAPPSについてご存じでしょうか。
APPSは他のビタミンC誘導体に比べて、肌への浸透性が高く、ビタミンCへの変換率にも優れているため、美白効果をはじめアンチエイジング効果も期待できるといわれています。
この記事では、注目の美容成分APPSについて徹底解説。
他のビタミンC誘導体との違いや、今までビタミンC配合化粧品で効果を実感できなかった人向けに商品選びのポイントをお伝えします。
今回、APPSについて教えてくれたのは
薬剤師 藤原 智沙恵 さん
研修認定薬剤師、1児の母。
メーカーで化粧品・医薬部外品の研究開発職に従事し、スキンケア製品や衛生用品の開発に携わる。
薬事申請や2度の特許出願なども経験した後に、調剤薬局の薬剤師へと転職。
薬局で様々な皮膚疾患をもつ患者さんの服薬指導にあたり、さらに多くの人に正しい情報を発信していきたいという思いを持ち、医療・美容分野を中心に執筆活動を始める。
薬剤師やメーカー勤務時代に取得した化粧品成分上級スペシャリストの資格を活かし、化粧品成分の安全性や美容サプリメントの正しい服用方法などを伝える記事の執筆・監修に積極的に取り組んでいる。
ビタミンCとビタミンC誘導体
毛穴のひきしめ効果や美白効果、さらには肌のハリやシワを改善する効果もあるといわれるビタミンC。効率的に肌に取り入れることができれば様々な美肌効果が期待できる成分ですが、残念ながら水溶性であるビタミンCそのものは角質層のバリアを通過することができません。
またビタミンCは空気中の酸素に触れると酸化されやすく、化粧品に配合しにくいという欠点もあります。
それを解決しようと、ビタミンCを化学修飾して開発されたのが、ビタミンC誘導体です。
APPSとは
ビタミンC誘導体の中でも、特に進化型ビタミンC誘導体といわれるAPPS。
製品名のアプレシエと呼ばれることもありますが、全成分表示名称はパルミチン酸アスコルビルリン酸3Naといいます。APPSは水溶性ビタミンC誘導体である「リン酸型ビタミンC誘導体」にパルミチン酸を合成して親油性を獲得した新しいビタミンC誘導体です。
特徴
浸透力が高く、速効性がある
APPSは肌への浸透性が高く、従来型の水溶性ビタミンC誘導体の数十倍~100倍の浸透力をもつといわれています。
肌の表面にある角質層は、セラミドなどの細胞間脂質や皮脂で形成された脂溶性をしています。逆に角質層のさらに奥にある基底層や真皮の部分は水溶性です。
APPSは水にも油にもなじみやすい性質を持つため、角質層のバリア機能を通過することができ、さらに真皮まで素早く浸透することができるのです。
肌になじみやすく低刺激
APPSは肌の皮脂と同じパルミチン酸を含むため、肌への親和性が高く、肌になじみやすい性質をもちます。
また従来のリン酸型ビタミンC誘導体では皮脂分泌が抑制されてしまうことによる乾燥や刺激性がありましたが、APPSはパルミチン酸を付加することにより、低刺激で敏感肌・乾燥肌の方でも使いやすく改良されました。
効果
シミを予防し、改善する効果(美白効果)
APPSは体内でフォスファターゼ、エステラーゼという2つの酵素でビタミンCへと変換され、美白効果を発揮します。
APPSはシミに対して3つのアプローチをします。
①メラニン色素の合成を促すチロシナーゼの働きを抑えて、シミが作られるのを予防する作用
②黒色メラニンを還元し、無色化することでシミの色素を薄くする作用
③抗酸化作用で活性酸素を除去し、肌の炎症を抑えてシミができるのを予防する作用
今あるシミを完全に消すことはできませんが、新しいシミができるのを予防する効果や、できてしまったシミを薄くする効果が期待できます。
シワやたるみを改善する効果(アンチエイジング効果)
従来のリン酸型ビタミンC誘導体はイオン導入をしないと真皮まで十分に浸透することができませんでしたが、APPSはその高い浸透性から塗布するだけで真皮まで到達することができます。そのため、真皮で効率よくコラーゲンの生成を促進し、肌のハリを向上させ、シワやたるみを改善する効果が期待できます。また、APPSの抗酸化作用により、真皮内で活性酸素を除去してコラーゲンが破壊されるのを防ぐ効果もあります。
皮脂分泌を抑えて、ニキビや毛穴の黒ずみ・開き毛穴を改善する効果
APPSは過剰な皮脂の分泌を抑えて、ニキビを改善したり毛穴の開きを予防したりする効果が期待できます。
また毛穴に詰まった角栓の酸化を抑えることで毛穴の黒ずみを予防する効果もあります。
毛穴の目立ちは皮脂分泌だけでなく、乾燥が原因によるものも多いです。APPSは従来のビタミンC誘導体よりも保湿効果が高いため、毛穴対策には一定の効果が期待できるでしょう。
他のビタミンC誘導体との比較
APPSは水にも油にもなじみやすい「両親媒性」の性質をもったビタミンC誘導体ですが、 他にも、水となじみやすい性質を持った「水溶性」と、油となじみやすい「脂溶性」のビタミンC誘導体があります。ここでは、3種類それぞれの特徴や、肌悩み別に推奨されるタイプについてお伝えします。
ビタミンC誘導体それぞれの特徴
メリット | デメリット | |
---|---|---|
両親媒性 | ・肌の奥まで浸透し効果が持続する ・肌に素早く浸透し速効性がある ・肌なじみがよい |
・安定性が低く酸化されやすい ・高価である |
水溶性 | ・肌に素早く浸透し速効性がある | ・肌の表面にとどまり効果の持続力が低い ・安定性が低く酸化されやすい ・肌に刺激や乾燥を感じやすい |
脂溶性 | ・安定性が高く、酸化されにくい | ・肌への浸透が遅い ・べたつきやすい |
この表からも分かるように、両親媒性ビタミンC誘導体は、水溶性ビタミンC誘導体の最大の特徴である「速効性」と、脂溶性ビタミンC誘導体の特徴である「真皮への浸透力と効果の持続力」をあわせもった機能性の高い成分であることがわかります。
肌悩み別に推奨されるビタミンC誘導体の一覧
ビタミンC誘導体は、両親媒性・水溶性・脂溶性でそれぞれ上記のような特徴があるため、肌質や肌悩みによって使い分けることが大切です。
両親媒性 | 水溶性 | 脂溶性 | |
---|---|---|---|
乾燥肌・敏感肌 | ◎ | △ | 〇 |
脂性肌 | 〇 | 〇 | △ |
ニキビ・毛穴 | 〇 | 〇 | △ |
シミなどの美白効果 | ◎ | 〇 | 〇 |
シワ・たるみ | 〇 | △ | 〇 |
また、肌悩みにきちんと効果を発揮するためには、推奨濃度を守ることも重要です。
水溶性ビタミンC誘導体と脂溶性ビタミンC誘導体の場合は、推奨濃度が5%になります。一方で、両親媒性ビタミンC誘導体であるAPPSの推奨濃度は、1~2%です。
一般的にビタミンC誘導体は濃度が高いほど高い効果が得られやすいといわれますが、10%以上からは効果に差がなく、刺激性が強くなるといわれています。
ビタミンC誘導体の例
化粧品には、すべての成分を化粧品成分表示名称で、配合順に表記しなければならないというルールがあります。
例えばビタミンCは、化粧品成分表示名称では「L-アスコルビン酸」といいます。
ここでは、化粧品を選ぶ際の参考になるよう、ビタミンC誘導体の一例を載せます。
化粧品成分表示名称 | 略称 | 性質 |
---|---|---|
L-アスコルビン酸 | VC | 水溶性 |
3-O-エチルアスコルビン酸 | VCエチル | 水溶性 |
リン酸アスコルビルMg | APM | 水溶性 |
アスコルビルリン酸Na | APS | 水溶性 |
アスコルビルグルコシド | AG | 水溶性 |
ビスグリセリルアスコルビン酸 | VC-DG | 水溶性 |
3-グリセリルアスコルビン酸 | VC-3G | 水溶性 |
テトラヘキシルデカン酸アスコルビル | VC-IP | 脂溶性 |
L-アスコルビン酸パルミチン酸エステル | VCパルミテート | 脂溶性 |
パルミチン酸アスコルビルリン酸3Na | APPS | 両親媒性 |
イソステリアルアスコルビン酸2Na | APIS | 両親媒性 |
ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸 | VC -MG | 両親媒性 |
一部のビタミンC誘導体化粧品で効果を感じられない理由とは
様々な美肌効果をもつことで有名なビタミンC誘導体は、多くの化粧品に配合されています。しかし、使用を続けても効果を実感できないと感じる方も実は少なくありません。
ここでは一部のビタミンC誘導体化粧品で効果を感じられない理由と商品選びのポイントについてお伝えします。
配合濃度が低い可能性
ビタミンC誘導体は、ビタミンCを化学修飾することで安定性を高め、肌により浸透しやすくなるように改良されています。しかし、誘導体にすることで、もとのビタミンCよりも巨大化してしまい、実際のビタミンC濃度に換算するとかなり少なくなっている……ということがあります。
そのためにも、それぞれのビタミンC誘導体での推奨濃度を確認し、きちんと配合されている化粧品を選ぶことが大切です。
配合成分に問題がある可能性
多くのビタミンC誘導体は、体内の酵素でビタミンCに変化して作用を発揮します。
しかし、肌の上でその酵素の活性が弱いと、ビタミンC誘導体はビタミンCに変換されることができずに本来の効果が発揮できません。
例えば、ビタミンCにグルコースを合成した誘導体であるアスコルビルグルコシドは、α-グルコシダーゼというグルコースを切り離す酵素がヒトの肌の上にほとんどないため、肌に浸透しても効果はあまり期待できないといわれています。
成分が劣化している可能性
ビタミンC誘導体は、空気と触れることで酸化したり、空気中の二酸化炭素の影響で商品の㏗か変わってしまったりすることで簡単に劣化してしまい、本来の効果を発揮することができなくなってしまいます。
商品の開封後はできるだけ早めに使いきるようにすること、空気と触れにくい容器形態をしている商品を選ぶようにすることなどを意識するとよいでしょう。
APPSに関するよくあるQ&A
フラーレンと併用するといいの?
フラーレンはビタミンCの約170倍もの抗酸化力をもつことで知られる美容成分です。
APPSの唯一の欠点は酸化されやすいこと。肌の中に活性酸素が多くあるとAPPSが効果を発揮する前に酸化されてしまいます。
併用することでフラーレンが活性酸素を吸着し、APPSの酸化を防いで美肌効果を最大限に高めてくれます。
フラーレン あらゆる肌悩みにアプローチする美容成
APPSと併用してはいけない成分ってあるの?
APPSと併用不可な成分はありません。
ナイアシンアミドと相性が悪いといううわさもあるようですが、両成分を通常濃度で併用するのであれば全く問題ありません。
朝使ってもいいの?
朝に使用しても問題ありません。
APPSは肌なじみが良く、皮脂分泌を抑える効果もあるため、朝のメイク前に使用することで皮脂によるメイク崩れを防ぐ効果が期待できるでしょう。
また、毎日朝・晩の2回使うことで、商品が劣化する前に早めに使いきるようにしましょう。
APPSに副作用はあるの?
APPSに副作用はありません。
他のビタミンC誘導体と比較しても、肌に刺激や乾燥を感じにくい成分です。
もちろん、肌の状態や濃度によっては肌に痒み・赤み・刺激感などを引き起こす場合はあるでしょう。推奨濃度を守り、肌の状態をみながら使用するようにしましょう。
APPSで効率よく美肌対策を!
ビタミンC誘導体の中でも、その機能性の高さから進化型ビタミンC誘導体といわれるAPPS。
肌への浸透力や速効性から、美白効果・アンチエイジング効果・毛穴対策など幅広い美肌効果が期待できます。
APPSの効果を最大限に発揮するためには、推奨濃度を守り、成分が劣化する前に早めに使い切ることが大切です。また、強力な抗酸化作用をもつ美容成分フラーレンとの併用もおすすめ。
APPSを正しく使用して、効率よく美肌対策をしましょう。