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防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、内臓脂肪を分解して燃やす働きと、食事に含まれる脂を便と一緒に出す働きがあることから、肥満が気になる方や便秘に悩む方に効果的とされている漢方薬です。
しかし、防風通聖散の長期服用は肝臓に悪影響を及ぼす・飲み続けると良くないという話をSNS等で見かけたことがある方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、漢方医でもある医師の新見正則先生に防風通聖散とはどんな漢方薬かや、安全性・副作用、長期服用の危険性について教えていただきました。

教えてくれたのは

新見正則医院 院長

医師 新見 正則 先生

1985年慶應義塾大学医学部卒業。98年移植免疫学にて英国オックスフォード大学医学博士取得(Doctor of Philosophy)。2002年より帝京大学医学部博士課程指導教授(外科学、移植免疫学、東洋医学)。2013年イグノーベル医学賞受賞(脳と免疫)。20代は外科医、30代は免疫学者、40代は漢方医として研鑽を積む。現在は新見正則医院、世界初の抗がんエビデンスを獲得した生薬フアイアの啓蒙普及のために自由診療のクリニックでがん、難病・難症の治療を行っている。新刊『フローチャート整形外科漢方薬』はAmazonで三冠(臨床外科、整形外科、東洋医学)に輝きました。
「しあわせの見つけ方 予測不能な時代を生きる愛しき娘に贈る書簡32通」も好評発売中。

◆当コラムの掲載記事に関するご注意点
※本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

防風通聖散とは

漢方薬は生薬の足し算です。生薬とは自然界に存在するもので、多くは植物で、希に動物や鉱物が生薬として使われます。

防風通聖散の構成生薬は18種類で、滑石、黄岑、甘草、桔梗、石膏、白朮、大黄、荊芥、山梔子、芍薬、川芎、当帰、薄荷、防風、麻黄、連翹、芒硝、生姜です。この中に動物性生薬はありません。鉱物性生薬は芒硝と滑石です。他の16種類はすべて植物です。 18種類を構成生薬とする保険適用漢方エキス製剤は防風通聖散だけで、この18種類が最多の構成生薬数です。

ザックリとしたお話として構成生薬数が少ないものは速効性があるが薬剤耐性ができやすいと言われています。こむら返りに著効する漢方薬として有名な芍薬甘草湯は速効性がありますが不用意な連用は芍薬甘草湯の効果を弱めることになります。一方で防風通聖散のように構成生薬数が多いものは速効性はないものの薬剤耐性になることはなく体質改善的なイメージで長期連用する薬剤です。「ザックリと」とお話したのは、すべての構成生薬に薬効がある場合で、実は生薬それぞれの薬効は歴史的に体感された経験知からのもので、科学的に有効性のエビデンスがあるものは多くはありません。昔の経験知と理解して割り切って使いましょう。

防風通聖散の歴史

防風通聖散は1172年に書かれた宣明論に載っています。しかし、今から1000年以上前の生薬が現在使用されているものと同じとする根拠はありません。植物のDNA鑑定ができるはずもなく、また写真もない時代です。1000年の時を経て、同種の植物や鉱物が転用されている可能性は否定できず、むしろ現在と1000年前が同じと考えること自体に無理があると思われます。ワインの原料であるブドウも品種によって、また同じ品種でも産地や生産年、そして産地の僅かな場所の違いでも味が異なるのとおなじイメージです。

しかし、防風通聖散は1000年の時を経ても使われています。生薬が現在とまったく同じではないとしても、時の知恵を振り絞って代替品を探した歴史が生薬の歴史でもあるため、効果が維持されているのです。

漢方薬は1960年に十味敗毒湯、葛根湯、五苓散、当帰芍薬散の4処方が保険適用されました。その後1976年までに42処方が保険適用されています。その中に小太郎製薬の防風通聖散があります。その後の1987年まで148処方が認可され今日に至っています。つまり、1987年以降に新しい漢方薬が保険適用とされたことはありません。これは漢方薬も西洋薬と同じ認可基準で保険適用にするという当然のルールが適用されたからです。

つまり1976年の小太郎製薬の防風通聖散の保険適用を端緒に、その後もいろいろなメーカーからの防風通聖散が大規模臨床試験を経ることなく経験的に有効だという理由から保険適用されました。保険医薬品として防風通聖散を含めた148処方が現在利用できることは、利用者からすれば素晴らしいことですが、西洋薬剤が保険適用となるために当然に課される大規模臨床試験を経ていないことは、保険医療費の窮状からは、漢方エキス製剤の保険外しのひとつの理由として多大な影響を及ぼしています。

処方薬と市販薬の違い

保険適用漢方エキス製剤は処方箋で医療機関から処方され、薬代の少なくとも7割は公費で負担され、消費者の負担額は3割以下です。一方で薬局で処方箋を必要とすることなく購入できる薬剤はOTC薬と言われます。OTCとはOver the Counterのことで、カウンター越しに手に入る薬剤という意味です。一般用医薬品とも言われます。
防風通聖散は一般用医薬品としてナイシトールやコッコアポといった商品名でも発売されています。箱の裏や添付文書には、医薬品分類として一般用医薬品、そして薬効分類として防風通聖散と記載されています。

保険適用漢方エキス製剤には「効能又は効果」といういわゆる保険適用病名が存在し、それに該当しないと保険適用とはされません。ツムラの医療用防風通聖散の「効能又は効果」には、「腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、便秘」と記載されています。漢方薬は生薬の足し算でいろいろな成分を含むため、いろいろな症状に有効と歴史的に考えられているのです。しかし、残念ながら西洋薬と同じようなそれぞれの病名や症状名に対して大規模臨床試験は行われていません。

防風通聖散の安全性や副作用は?

漢方薬は自然界にある生薬から構成されますが、自然界にあるからといって安全とは限りません。毒キノコで亡くなる方が少なからずいることからも推測可能でしょう。もちろん多くの人に明白な毒性がある生薬は、毒性を示す量以上のものは市販の漢方薬には含まれていません。しかし、長期の服用や、体質的に少量でも異常をきたす人が希に存在することは事実です。

防風通聖散の場合は、麻黄を含みますから動悸や高血圧を誘発することがあります。また甘草を含むので長期投与で偽アルドステロン症(高血圧、低カリウム血症、浮腫)を招くこともあります。また、山梔子は数年以上に亘る投与で腸間膜静脈硬化症を極希に引き起こします。大黄の長期投与で大腸メラノーシスとなることもあります。そして黄芩による間質性肺炎も極希に起こります。

医療用保険適用漢方エキス製剤でもっとも処方されているものは大建中湯ですが、一般用漢方医薬品では断トツで防風通聖散です。そして防風通聖散による肝機能障害が、防風通聖散の使用者が膨大なため、多数例の報告があります。数ヶ月以上内服するときは医師や薬剤師に相談しながら内服を続けましょう。心配な時は採血をすれば肝機能障害を簡単に見つけることができます。

防風通聖散の長期服用は危険?

防風通聖散には上記のような副作用が希にありますが、それらを理解して長期内服することは問題ありません。多くの方が肥満の解消目的で内服されていますが、炭水化物の制限や軽度の運動は防風通聖散の効果を増強します。防風通聖散を試しながら、いろいろ工夫して下さい。

防風通聖散に含まれる大黄には瀉下作用(便を出す)があるので、下痢気味の人には不向きです。また麻黄に交感神経刺激作用があるので高血圧傾向の人はちょっと注意しましょう。そして決められた量以上は飲まないようにしてください。肝機能障害をきたす人の多くは(自己判断で)使用量以上の内服を長期に行っています。

まとめ

漢方薬は西洋薬剤に比べれば副作用がすくないことは事実です。僕は漢方薬は西洋薬と食品の中間的立ち位置であると説明しています。西洋薬はとても有効ですがいろいろな副作用があります。ですから西洋薬は内服しようか迷った時は飲まないのです。一方で漢方薬は食事の延長のイメージですから、漢方薬を内服しようか迷った時は内服を勧めています。メリットとデメリットを勘案して、上手に防風通聖散を含めた漢方薬を使ってください。

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