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トラネキサム酸とは?成分の特徴や効果的な取り入れ方、副作用も解説

美白※効果のある成分として厚生労働省が認めている「トラネキサム酸」は、医薬部外品などにも含有されている有効成分です。美白※効果が期待され、近年美白※化粧品の成分として使われています。

しかし、一般の方には聞き慣れない成分であるため、それを使用するとどんなメリットがあるのか、普段の生活のなかでどのように取り入れたらよいのか悩んでしまう人も少なくありません。
そこで今回はトラネキサム酸の特徴や効果、手軽にできる取り入れ方などについて徹底解説します。

※:メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ

トラネキサム酸とは

「トラネキサム酸」とは人工的に作られたアミノ酸の一種で、美白効果※が期待できる成分です。たんぱく質を構成する「必須アミノ酸リシン」をもとに作られており、昨今、美容業界でも注目されています。

※:メラニンの生成を抑え、しみ・そばかすを防ぐ

医薬品としてのトラネキサム酸の主な作用は、体内のたんぱく質である「プラスミン」の生産・増加を阻害することです。このプラスミンには、アレルギーや炎症を引き起こしたり血液を溶かしたりといった働きがあります。

そうした作用のあるプラスミンをトラネキサム酸によって抑制することで、結果的に肌荒れや美肌の改善、止血効果などを期待できるのです。

また冒頭でも述べたとおりトラネキサム酸は、のどの腫れや口内炎の治療薬などの医療用医薬品・一般用医薬品(市販)によく配合されています。そのほか歯磨き粉など、私たちが毎日使うような日用品にも含まれている身近な成分です。

トラネキサム酸に期待できる2つの美白効果

風邪をひいて病院に行ったときなどに「トラサミン」といったトラネキサム酸の内服薬を処方してもらった経験がある方も多いでしょう。これはトラネキサム酸が持つ抗出血・抗アレルギー・抗炎症作用により、のどの炎症や痛み、口内炎の症状を緩和させる効果が期待できるためです。

そんなトラネキサム酸は、抗炎症作用によりシミや肝斑などにも効果があるとされています。ここではトラネキサム酸に期待できる2つの美白効果について詳しく解説します。

炎症を抑える

1つ目の効果は、体内の炎症を抑えることです。前述したように、炎症の多くは「プラスミン」というたんぱく質が関係しています。

【体内で炎症が起きるメカニズム】
1:体にウイルスが入り込み感染すると、細胞が破壊されてプラスミンが発生する
2:大量に発生したプラスミンが、痛みや炎症を引き起こす物質を誘発させ、同時に血管を拡張させる
3:患部が炎症を起こし、痛み・腫れ・赤み・熱感などの症状が引き起こされる


体内の炎症を抑えるには、メカニズム1の段階でプラスミンの生産・増加を抑制しなければなりません。トラネキサム酸にはプラスミンの生産・増加を抑える働きがあるため、体内に取り入れることにより炎症の改善につながるのです。

シミの発生には肌の炎症が関係しています。したがって炎症を抑えることによりシミの予防や抑制に寄与できると考えられています。

メラニン色素ができるのを防ぐ

トラネキサム酸はシミや肝斑(かんぱん)の改善にも効果が期待できます。そもそもシミができてしまう主な原因は「紫外線」であり、以下のようなメカニズムで発生します。

【シミができるメカニズム】
1:肌表面に紫外線が当たると、体内の細胞が紫外線のダメージから肌を守ろうとして、細胞組織の一つ「メラノサイト」にメラニンを作る指令を出す
2:その指令を受けたメラノサイトが「メラニン」を作り始める
3:作られたメラニンが肌表面に送り込まれて、目に見えるシミや日焼けとなる

紫外線を大量に浴びてしまうと肌のターンオーバーが乱れ、メラニンの生成と排出のバランスが崩れてしまいます。その結果、メラニンがどんどん蓄積されてシミができてしまうのです。

トラネキサム酸にはメラノサイトの活性化を抑制する働きもあるため、シミができるメカニズム1の段階でメラノサイトに働きかけて、メラニンの生成を抑えてくれます。

また30代後半から50代の女性にできやすい「肝斑」にも、トラネキサム酸は有効です。なお肝斑は「女性ホルモンの乱れ」が主な原因といわれていますが、トラネキサム酸は女性ホルモンに直接働きかけるわけではありません。あくまでも肝斑の原因となるメラノサイトに作用してメラニンの生成を抑制します。

ちなみに先ほどご説明した、炎症を引き起こしてしまうプラスミンのもう一つの働きが「メラノサイトの活性化」です。これについても、トラネキサム酸によってプラスミンが抑制されるため、結果的にメラノサイトも活性化せずにシミや肝斑の改善が期待できます。

「消えないシミ」肝斑にはトラネキサム酸

なかなか消えないシミがある、と思ったことはありませんか?もしかしたら、それは普通のシミではなく肝斑かもしれません。肝斑と聞くと「加齢のせいだから仕方ない」「もう治らない」と思う方もいますが、諦める必要はありません。トラネキサム酸が持っている「抗炎症作用」を美容に応用することで、「消えないシミ」、つまり肝斑にも効果が期待できるのです。厚生労働省は平成28年に、トラネキサム酸が肝斑の改善に効果があると認め、その目的での使用を許可しました。

ここでは肝斑の特徴や発症年齢、原因などを解説していきます。正しいケアをするために、「消えないシミ」肝斑への理解を深めましょう。

肝斑とは

肝斑とは、治りにくいとされているシミの一種です。普通のシミなら肌のターンオーバーのサイクルに従って数ヶ月で薄くなったり消えていったりしますが、なかなか消えないシミがあればそれは肝斑かもしれません。

特徴

肝斑は頬骨のあたりや額、口の周りに左右対称にモヤッと現れることが多いです。普通のシミほど輪郭がはっきりせず、比較的広い範囲に薄茶色や黒っぽい茶色が広がります。広範囲にできやすいことから、肝斑ができると顔全体の印象が暗くなりがちです。目の周りにはできないため、色が抜けたように見えることもあります。

また肝斑は紫外線の影響を受けるため季節によって濃さが変わることがあります。紫外線が強くなる夏に濃くなった肝斑が、冬になると落ち着いたり夏が近づくと再び濃くなったりするのです。

発症年齢

年齢とともに増えていく普通のシミとは異なり、肝斑は30~40代の女性に多く見られます。50代に入ると徐々に薄くなったり消えたりしていき、高齢者ではほとんど発生しません。

このように特定の年齢層で発症しやすいのは、女性ホルモンのバランスの影響を受けるためです。プロゲステロンという女性ホルモンが優位になるとメラニン色素が過剰に生成され、色素が目立つようになります。そのため肝斑は男性に発症することは比較的少なく、閉経とともに落ち着いてくることが多いのです。

肝斑の原因

肝斑が発生する原因について、はっきりとしたことは分かっていません。しかし閉経後には徐々に消えていくこと、妊娠中やピルの使用時に発生しやすいことなどから、女性ホルモンと関係があると考えられています。

また、ストレスの影響でホルモンバランスが崩れ肝斑が濃くなることもあります。慢性的な紫外線ダメージや物理的な刺激もメラニン色素の生成に関与しているため、悪化の原因になるでしょう。

効果を感じられるまでにかかる時間

トラネキサム酸による肝斑への効果を感じるためには、少なくとも3ヵ月以上の時間が必要です。

トラネキサム酸の取り入れ方には薬用化粧品(医薬部外品)を日々使用する方法と、内服薬を飲む方法があります。肝斑の改善には内服が効果的とされていますが、すぐに効果を実感できるものではありません。トラネキサム酸の含有量が多い医療用医薬品(医療機関による処方が必要)であっても、3ヵ月以上は服用する必要があるでしょう。市販薬の場合は、4ヵ月以上は見ておきましょう。

トラネキサム酸はドラッグストアで買える?

シミや肝斑の改善のためににトラネキサム酸を取り入れる際、ドラックストアなどで手軽に入手したいと思う方もいるでしょう。結論から言うと、トラネキサム酸配合の医薬品や医薬部外品は、ドラックストアや通販でも購入は可能です。ただし医療機関で処方される医薬品と比べると含有量が少ないため、より高い効果を求める場合は医療機関を受診することをおすすめします。

ここでは、ドラックストアや通販などでトラネキサム酸を購入する際に知っておきたいことや、期待される効果について確認していきましょう。

トラネキサム酸配合の市販薬

ドラッグストアなどで購入できる市販薬の中には、トラネキサム酸を含有しシミや肝斑への効果が認められているものもあります。ただし市販薬と医療機関で処方される医療法医薬品では、1日で摂取できる上限量が大きく異なります。

分 類
医療用医薬品
一般用医薬品
(OTC医薬品)
1日の上限量
2,000mg
750mg

上記のように、医療用医薬品の場合は市販薬の2倍以上ものトラネキサム酸を摂取できます。また市販薬の場合トラネキサム酸以外に複数の有効成分が配合されていることも 珍しくありません。そのためトラネキサム酸の高い効果を感じたい場合には、医療用医薬品を選ぶと良いでしょう。ご自身のライフスタイルと相談しながら選んでください。

トラネキサム酸配合の化粧品には効果がある?

トラネキサム酸はもともと医療用医薬品として使われてきましたが、2002年に医薬部外品の有効成分として使用許可がおり、現在ではトラネキサム酸配合の薬用化粧品も多く販売されています。そのほとんどがシミや肝斑対策であるため、継続的に使用することにより緩やかな効果が期待できるでしょう。ただし市販されている薬用化粧品はトラネキサム酸の含有量が多くないため、すぐに効果を実感できるものではありません。

また、トラネキサム酸を含む薬用化粧品は「医薬部外品」に分類されるため、一般化粧品(医薬部外品に該当しない化粧品)には含まれない点に注意しましょう。

トラネキサム酸の副作用やリスクは?

トラネキサム酸は一般的に「副作用が起こるリスクが低い成分」として知られています。

特に化粧品や市販薬でトラネキサム酸を取り入れる場合、医療用医薬品の内服薬で取り入れる場合と比べると、さらに副作用のリスクは低減するでしょう。医療用医薬品よりも、化粧品や市販薬に配合されているトラネキサム酸のほうが圧倒的に含有量が少ないからです。

とはいえ薬剤のため副作用が起こる可能性は否定できません。そこで次に、トラネキサム酸の使用で考えられる主な副作用やリスクを解説します。

トラネキサム酸が原因で起きる可能性のある症状

トラネキサム酸の使用で考えられる主な副作用は以下のとおりです。

・皮膚のかゆみ
・頭痛
・食欲不振
・吐き気や嘔吐
・めまい
・下痢
・胸やけ
・眠気 など


これらの症状が出るのはトラネキサム酸を服用した人のうち0.1~5%程度と言われています。もし上記の症状が出た場合はすぐに服用を中止し、症状がひどい場合は医師に相談しましょう。

トラネキサム酸を服用する際注意が必要な人

トラネキサム酸は止血作用があるため、血液をサラサラにする薬を飲んでいる人は効果が得られないことがあります。脳梗塞や心筋梗塞などの血栓系の病気を発症した経験のある方は、服用できない場合もあるので注意しましょう。

また肝斑は女性ホルモンのバランスが関係していると考えられているため、妊娠・授乳中の人も注意が必要です。気になる人は自己判断せず、必ず医師の診察を受け処方してもらうようにしましょう。

トラネキサム酸と一緒に飲んではいけない薬

医薬品であるトラネキサム酸と一緒に使用すると、副作用のリスクを高めてしまう可能性がある薬も存在するため注意しましょう。たとえば止血剤である「トロンビン」や「経口避妊薬(ピル)」などです。トラネキサム酸には止血効果が期待されるため、同じく止血目的で使用するトロンビンを併用してしまうと血栓症のリスクを増大させる可能性があります。

また経口避妊薬の副作用の一つに「血栓症」があります。このため経口避妊薬とトラネキサム酸を併用すると血栓症のリスクを高めてしまう危険性があるのです。

もし普段から何かしらの薬を飲んでいる方は、必ず医師に相談してからトラネキサム酸を処方してもらいましょう。

トラネキサム酸を飲むと白髪が増えるって本当?

「トラネキサム酸を飲むと白髪が増える」といった噂を耳にしたことがある方も多いでしょう。しかしこの噂に医学的根拠はありません。

もしかすると、自然に白髪が増え始める30〜40代の方が意識してトラネキサム酸を取り入れるケースが多いことから、このような誤解が生まれているのかもしれません。

まとめ

トラネキサム酸は炎症やアレルギーを引き起こすプラスミンの働きを抑制したり、シミや肝斑の原因になるメラニンの生成を抑えたりする効果があります。副作用のリスクは低いといわれている有効成分なので、シミや肝斑のケアに力を入れたい方は積極的に取り入れてみましょう。
ドラックストアや通販でも気軽に入手できますが、より高い効果を期待するなら含有量が多い医療用医薬品をおすすめします。

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