美容医療のかかりつけ わたしの名医

花粉が肌に付着することで起こる肌荒れは「花粉皮膚炎」と呼ばれる皮膚疾患の一つで、主に肌の赤み・かゆみなどの症状を引き起こします。花粉による肌荒れに悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

この記事では、医師の宇井先生に監修いただき「花粉によって肌荒れが起こる原因や予防・対策方法・効果的なスキンケアのやり方など」について詳しく解説します。花粉が飛散する季節は普段以上に肌をしっかりと保湿し、花粉の影響を受けにくい健康な肌を目指しましょう。

監修者

やさしい美容皮膚科・皮フ科
秋葉原院 院長


医師 宇井 千穂 先生

準ミス日本受賞。全日空客室乗務員を経て、北里大学医学部を卒業し、皮膚科医、美容皮膚科医として勤務。
web雑誌での連載やサプリメント、化粧品の監修など、多方面で活躍中。

◆当コラムの掲載記事に関するご注意点
※監修者は「選び方」について監修・制作をおこなっています。掲載商品の監修には関わっておりません。
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花粉で肌荒れする?

結論からいうと、花粉によって肌荒れは起こります。花粉が飛散している春や秋の時期に乾燥やストレスなどによって肌のバリア機能が低下していると、肌に花粉が付着した際に刺激を感じやすく、肌荒れを引き起こすことがあります。

肌荒れする原因

私たちの肌の角質層には、アレルギー物質や雑菌などの外的刺激をブロックし、肌内部の水分や栄養分を保持してくれる「バリア機能」が備わっています。しかし、肌が過度に乾燥したり外的刺激に多く触れたりすると、バリア機能が低下してしまいます。

肌のバリア機能が低下すると、肌が乾燥しやすくなるほか、少しの刺激でも肌が過剰に反応するようになります。とくに花粉が飛散する時期は空気が乾燥していて肌のバリア機能が弱まりやすく、花粉による刺激によって肌荒れが起こりやすいため、普段以上に注意が必要です。

その肌荒れ、「花粉皮膚炎」かも

冬から春にかけてスギやヒノキなどの花粉によってアレルギー反応を引き起こす「花粉症」の方も多いのではないでしょうか。花粉症の一般的な症状として、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどが知られていますが、花粉が肌に付着することで肌荒れの症状を引き起こすケースもあります。

花粉によるアレルギー反応で肌が荒れる症状のことを「花粉皮膚炎」と呼びます。花粉が原因と気付かない方もいますが、毎年同じ時期に肌が荒れる方や花粉症の症状が肌まで現れる方は、花粉皮膚炎を発症しているかもしれません。

花粉皮膚炎と主な症状

花粉が原因で引き起こされる肌荒れを「花粉皮膚炎」といいます。花粉皮膚炎は、普段は肌トラブルがない状態の方でも花粉が飛散するシーズンにのみ肌荒れが起き、花粉が付着しやすい顔や首などの箇所に症状が現れることが特徴です。

花粉が多く飛び交う時期は花粉を飛散させる植物によって異なりますが、一般的に症状を引き起こしやすいのはスギ花粉の2〜4月、ヒノキ花粉の3〜5月、ブタクサ花粉の8〜10月といわれています。これらの時期に肌のバリア機能が低下していたり、元々肌がゆらぎやすい体質だったりすると、花粉によって肌の赤み・かゆみ・肌荒れなどの症状が起こります。

花粉皮膚炎の症状

花粉皮膚炎の主な症状として、以下のようなものが挙げられます。

・目や顔の周りが赤くなる
・肌にかゆみが出る
・肌が乾燥する

花粉皮膚炎は、主に顔の周りに症状が現れます。とくに症状が出やすいのはまぶたや頬、首周りなどの花粉が付着しやすいパーツです。

症状の現れ方や程度には個人差がありますが、なかには肌が乾燥してヒリヒリする方や、かゆみを強く感じる方もいます。悪化すると普段使っているスキンケア化粧品がひりついたり、肌荒れによって化粧ノリが悪くなったりすることもあるため、早めの治療が必要です。

花粉皮膚炎になりやすい人

花粉皮膚炎は誰でも発症しうる皮膚疾患ですが、そのなかでも以下に当てはまる方は発症しやすい状態であるといえます。

・肌が乾燥している方、乾燥肌の方
・アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を持っている方
・花粉を多く浴びる場所によく行く生活習慣がある方

とくにアトピー性皮膚炎の方は肌が乾燥しやすいうえ、肌のバリア機能が低下していて外的刺激に敏感になっているため、一度発症すると症状が重くなりやすいでしょう。また、肌がゆらぎやすい若い女性も、花粉皮膚炎を発症しやすいといわれています。

花粉による肌荒れを予防するためには

花粉皮膚炎は発症すると治療・改善に時間がかかるため、あらかじめ予防することが大切です。普段の生活習慣やスキンケアルーティンを工夫するだけで簡単に対策ができるので、ぜひこの機会に取り入れてみてはいかがでしょうか。

肌のバリア機能を高める

花粉皮膚炎は、肌のバリア機能の低下によって引き起こされやすい皮膚疾患です。肌のバリア機能が低下していると、花粉をはじめとした外的刺激に敏感になり、肌トラブルを招くことに繋がります。花粉皮膚炎を予防するためには、普段から肌のバリア機能を高めておくことが重要です。

洗顔後やクレンジング後には肌の保湿をしっかりとおこなうことはもちろん、低刺激のスキンケア化粧品を使うなどして肌に負担がかからないようにするとよいでしょう。

肌を花粉からガードする

花粉皮膚炎は花粉が肌表面に付着することによって肌が反応するため、花粉が飛散している春や秋は肌を物理的に花粉から守ることも重要です。

外出する際はマスク・メガネ・帽子・ストールなどのアイテムを身につけ、症状の出やすい顔や首周りをしっかりとガードしましょう。また、肌に日焼け止めやベースメイクを塗っておくことも有効な対策方法の一つです。素肌の上に膜を作ることで、肌表面に直接花粉が付着するよりもダメージを緩和することができます。

花粉による肌荒れスキンケア方法

花粉が飛散する時期や、花粉によって肌に少し影響が出始めてきたときには、スキンケアを普段以上にていねいにおこなうことが重要です。肌のバリア機能を低下させないように注意を払いながら、花粉から肌を守りましょう。

摩擦を避ける

摩擦は肌にとって大敵です。洗顔時は洗顔フォームを十分に泡立て、濃密な泡でこすらず包み込むようにして花粉を洗い流しましょう。洗顔後は柔らかいタオルやティッシュなどを肌に軽くあて、肌を摩擦しないように水分を拭き取ることがポイントです。

スキンケアをおこなう際も、肌を必要以上に触ったり擦ったりせず、肌に刺激を与えないように心がけましょう。また、外出後は顔についた花粉を放置せず、すぐに洗顔やクレンジングをおこなうことも大切です。

保湿をしっかりする

肌のバリア機能を正常に保つためには、毎日のスキンケアで肌をしっかりと保湿することが大切です。とくに乾燥肌や敏感肌の方、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患を持っている方は、保湿力の高いスキンケアアイテムを使って肌の乾燥を防ぎましょう。

たとえば、ヒアルロン酸・コラーゲン・セラミド・植物オイルなどの保湿成分が豊富に配合されたものであれば、肌に十分なうるおいを与えることができます。

刺激の低い化粧品を選ぶ

肌への負担や刺激を避けるために、敏感肌向けや低刺激のスキンケア化粧品を選ぶのも対策の一つです。敏感肌の方やゆらぎ肌の方はもちろん、普段は肌の不調をあまり感じない方でも、花粉が飛散している時期は肌が敏感になっている可能性があります。

肌への刺激がやや強いレチノールやピーリング効果のある成分は避け、保湿効果のあるセラミドや抗炎症作用のあるグリチルリチン酸ジカリウムなどが配合されたスキンケア化粧品を使うとよいでしょう。

花粉症の季節に意識したい5つの行動

花粉による肌荒れを防ぐためには、花粉をできるだけ体に近付けないようにすることが重要です。また、アレルギー反応を引き起こさないよう肌のバリア機能を高めたり、花粉症の治療をすることも効果的といえます。

花粉を家に持ち込まない

花粉の飛散が多くなる時期に外出する際は、帰宅したときに体に付着した花粉を家の中まで持ち込まないよう対策する必要があります。上着や帽子についた花粉は玄関先で落としてから家の中に入り、帰宅後はなるべくすぐに洗顔をして顔についた花粉を落としましょう。とくにウールやファーなどの素材は花粉が付着しやすいため、注意が必要です。

また、外出時だけでなく家の中にいるときでも、布団や洗濯物をできるだけ外に干さないようにするなどの工夫をおこないましょう。

花粉が飛びやすい日の外出は避ける

花粉症や花粉による肌荒れの症状がひどい方や、花粉を徹底的にガードしたい方は、花粉が飛びやすい日や時間帯を避けて外出するようにするのも一つの方法です。

一般的に晴れの日や気温が高い日、雨が降った日の翌日は花粉の飛散が多く、雨が降っている日は花粉の飛散が少ないといわれています。また、1日の間でも午前中と夕方の時間帯は花粉が飛びやすいため、出かける時間帯にも注意するとよいでしょう。

部屋の掃除をする

私たちの住む家には換気扇や窓・ドアなど、さまざまな隙間が存在します。どんなに気をつけていても、これらの隙間から花粉が侵入してきてしまうことは避けられません。こまめに部屋を掃除し、常に家の中を清潔にしておくことも大切です。

掃除をする際は初めから掃除機を使うと花粉が空中に飛び散りやすくなるため、雑巾やフロアワイパーなどで拭き掃除をして花粉やほこりを舞い上がらせないように工夫しましょう。その後に拭き取れなかった微細な汚れや隙間・溝などの部分を掃除機できれいにするのがポイントです。

規則正しい生活をする

日頃から規則正しい生活をし、肌を健康な状態にキープしておくことも大切なポイントの一つです。生活習慣が乱れたりストレスがかかったりすると、肌のターンオーバーが正常におこなわれず、肌のバリア機能が低下して肌トラブルを招いてしまう可能性が高まります。常にバランスのよい食生活や十分な睡眠を心がけ、ストレスを溜め込まないような生活習慣を身につけましょう。

花粉症の治療をする

花粉皮膚炎と併発して花粉症の症状も出ている場合、花粉症の治療をおこなうことも効果的です。たとえば、花粉症によるくしゃみや鼻水をかむ際のティッシュで肌に摩擦が起こり、肌荒れが悪化している可能性もあります。

花粉症は医師の診察のもと適切な治療を受ければ、症状を軽減させることが可能です。花粉症の症状が軽い時期から治療を始める初期療法を受け、肌荒れの症状も予防しましょう。

花粉の肌荒れを皮膚科で治療する

花粉対策を十分に行ったにも関わらず花粉皮膚炎を発症してしまった場合は、悪化する前に皮膚科で治療を受けるようにしましょう。花粉による肌荒れには、外用薬・内服薬・保湿剤などの治療方法があります。

外用薬で炎症を抑える

花粉によって肌が炎症を起こした場合に1番用いられているのが、ステロイド外用薬です。皮膚科で処方されるステロイドにはかゆみ・赤み・湿疹などの皮膚の炎症を抑制する作用があり、肌荒れの改善が期待できます。

とはいえ、ひとくちにステロイドといってもさまざまな強さの薬があり、症状によって適したものが異なります。必ず医師による診断を受け、症状にあったステロイドを処方してもらうようにしましょう。

内服薬でアレルギーを抑える

ステロイド外用薬のほかに、内服薬によってアレルギー症状を抑える治療方法もあります。花粉症の治療に用いられている抗ヒスタミン剤は、花粉による肌荒れの治療にも有効です。抗ヒスタミン剤には、体内にあるアレルギー症状を引き起こす化学伝達物質「ヒスタミン」の作用を抑える働きがあります。

かつては抗ヒスタミン剤を服用すると副作用で眠気が生じるとされていましたが、「第2世代抗ヒスタミン剤」が開発されたことにより、現在は副作用が改善されています。

保湿剤で肌を保護する

皮膚科では、保湿効果の高い医薬品の保湿剤を処方してもらうことも可能です。よく用いられるのは、外用薬の「ヒルドイド」で、含有されている「ヘパリン類似物質」には保湿作用や抗炎症作用があり、花粉による肌荒れにも効果が期待できます。

ヒルドイドは医薬品のため市販の保湿クリームや保湿剤よりも保湿効果が高く、顔や体などに塗布することで肌をしっかりと保湿することができます。

市販薬を使用する

もし花粉皮膚炎を発症した場合はすみやかに皮膚科を受診することが1番ですが、なかには多忙や生活スタイルの関係でなかなか病院を受診できない方もいるでしょう。皮膚科で処方される薬に比べて効果は劣りますが、皮膚科を受診せず、市販薬を服用して肌荒れのケアをすることも可能です。

市販薬で花粉による肌荒れを治療したい場合は、「ステロイド」や「ヘパリン類似物質」などの有効成分が配合されたものを選びましょう。花粉症対策の市販薬の服用に加えて、スキンケアで肌をしっかりと保湿することも重要です。それとともに、悪化する前に皮膚科を積極的に受診しましょう。

肌荒れがひどくなる前に早めの対策を

花粉によるアレルギー反応の症状は花粉症が有名ですが、花粉症に加えて花粉が原因で肌にかゆみや赤みなどの症状が現れる「花粉皮膚炎」を引き起こすことがあります。

炎症を起こさないためには、普段からスキンケアを入念に行って肌のバリア機能を高めておいたり、花粉を肌に直接付着させないようにガードしたりするなどの予防と対策が大切です。なかでも乾燥肌・敏感肌・アトピー性皮膚炎の方は肌のバリア機能が元々弱いため、花粉皮膚炎を発症すると重症化する可能性があります。もし発症してしまった場合は、皮膚科で適切な治療を受けるようにしましょう。

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