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フェルラ酸 美白化粧品から認知症サプリまで配合される理由とは

フェルラ酸という美容成分をご存じでしょうか。植物の細胞壁などに含まれているポリフェノールの一種として、古くからその確かな効果が認められており、食品、化粧品、サプリメントなどに幅広く使用されている成分です。
フェルラ酸はこれまでにも食品の酸化防止剤や、化粧品の美白成分としてその効果が注目されてきましたが、近年では認知症を予防する効果なども報告されています。

この記事では、フェルラ酸の歴史から現在確認されているさまざま効果、効率的に摂取する方法、副作用についても徹底解説します。

フェルラ酸とは

フェルラ酸とはポリフェノールに似た構造を有する有機化合物です。1886 年にオーストリアの Hlasiwetz Barthにより発見され、地中海沿岸に自生するセリ科の植物オオウイキョウから見つかったことから、オオウイキョウの学名(Ferula communis)にちなんで命名されました。
フェルラ酸は、植物の細胞壁中に含まれている成分の一つです。それは、植物の繊維質を作るときに必要な“リグニン”という成分を合成するために、フェルラ酸が必要な成分であるからだといわれています。
幅広い植物に普遍的に存在していることから、私たちは、穀類や野菜、果物、豆類などの食品から日常的にフェルラ酸を摂取することができています。

フェルラ酸で期待できる効果

では、フェルラ酸を摂取することで、どのような効果が期待できるのでしょうか。食品、化粧品、サプリメントでそれぞれ摂取したときに分けてご説明します。

食品における効果

酸化防止剤

フェルラ酸は強い抗酸化作用をもつことから、食品添加物リストに「酸化防止剤」としても収載されています。バナナの黒変防止、グリーンピースの色調保持、抹茶の退色防止等、さまざまな食品の空気による酸化の抑制に活用されており、細菌による汚染も抑えるという報告もあります。

紫外線吸収による光酸化防止

フェルラ酸は、紫外線を吸収する作用を持つことから、空気だけでなく光による酸化も防止することができます。
たとえば真鯛にフェルラ酸を投与すると、通常の真鯛よりも色調が明るくなります。これは、フェルラ酸が真鯛の主な色調成分であるアスタキサンチンやルテイン等のカロテノイドの光酸化を防止する作用をもつからであると考えられています。

化粧品における効果

美白効果

フェルラ酸はその構造がチロシンに類似しているという特徴があります。チロシンは必須アミノ酸の一種ではありますが、メラノサイトに取り込まれるとチロシナーゼの働きにより黒色メラニンに変化してしまいます。

フェルラ酸はチロシンに代わってチロシナーゼに結合することでチロシナーゼの働きを弱め、メラニンの生成を抑える効果があります。

さらに、フェルラ酸は天然の紫外線吸収剤として紫外線から肌を守る作用もあることから「日焼け止め」効果も期待できます。たとえば、フェルラ酸配合クリーム及びプラセボクリームを前腕部に8週間塗布してメラニン指数を測定した試験において、フェルラ酸配合クリームはメラニン指数を有意に減少させ、実際のヒトの皮膚で美白効果を確認した研究例が報告されています*¹。

抗炎症効果

私たちの肌は、外部から刺激を受けるとその情報が免疫細胞に伝わります。情報を受けた免疫細胞は防御反応としてさまざまな物質を放出しますが、この反応が長期化するとかえって炎症を引き起こす原因となり、赤みや肌荒れといった症状につながります。フェルラ酸にはこのような炎症反応を抑制する効果が報告されています。

ニキビを予防する効果

アクネ菌と黄色ブドウ球菌に抗菌成分を添加した研究において、フェルラ酸の抗菌力は、化粧品や医薬部外品に用いられる殺菌成分のサリチル酸を上回ると報告されています*²。アクネ菌や黄色ブドウ球菌は肌の上で異常に増殖するとニキビや皮膚炎を発生させる原因となることから、フェルラ酸を用いることで肌トラブルの改善や予防に効果があると考えられます。

サプリメントにおける効果

認知機能改善

フェルラ酸が脳機能を改善させる研究報告は多数あり、近年特に研究が進んでいるのは認知症の予防効果です。
認知症の中の約半数を占めると言われる「アルツハイマー型認知症」は、脳神経細胞に“アミロイドβ”というペプチドや“タウタンパク”というタンパク質が蓄積することで発症すると言われています。フェルラ酸には、このアミロイドβやタウタンパクを取り除く働きが確認されています。
実際に、アミロイドβが脳に蓄積して学習記憶が低下しているマウスにフェルラ酸を投与したところ、通常状態まで回復するという研究報告があります*³。またファンケルの研究では、フェルラ酸を添加しながら神経細胞を培養したところ、神経細胞内へのリン酸化タウタンパク質の量が低下し、アルツハイマー型認知症を改善する効果が確認されています*⁴。

生活習慣病の予防・改善効果

フェルラ酸には血糖値を下げる働きのある“インスリン”というホルモンの分泌を促進する効果があると考えられています。フェルラ酸を2 型糖尿病マウスに17 日間投与したところ、何も投与しなかった群と比較して有意な血糖値の低下が報告されています*⁵。
そのほかにもフェルラ酸によるコレステロールおよびトリグリセリドの低下などの報告例もあることから、高血圧症や脂質異常症にも効果が期待できると考えられています*⁶。

その他期待できる効果

発達障害

発達障害は、脳内において神経伝達物質の働きに異常が起こっていることが分かっています。フェルラ酸は、その脳機能を保護する効果から、発達障害の患者さんに服用してもらい経過観察を行っている臨床例もあります*⁷。

大腸がんの抑制作用

まだ細胞や動物実験での報告になりますが、大腸がん細胞の増殖を抑制したり、ラットの大腸がんに対する発がん抑制作用が報告されたりしています*⁸。

フェルラ酸の効率の良い取り入れ方

このようにさまざまな効果が期待できるフェルラ酸ですが、効率良く摂取するためにはどうすれば良いのでしょうか。ここではフェルラ酸の取り入れ方について解説します。

食品からの摂取

フェルラ酸は植物の中でも、特に米、小麦、タケノコ、トウモロコシに多く含まれています。
米の中では玄米に、小麦の中では小麦胚芽に特に多く含有されているようです。トウモロコシではポップ種に非常に多いとされており、加熱加工によってもフェルラ酸はあまり減少しないため、ポップコーンも実はフェルラ酸が多く含まれていると言われています。
また、コーヒーも有用なフェルラ酸の摂取方法の1つです。コーヒーにフェルラ酸そのものが含まれているわけではありませんが、コーヒーに含まれるクロロゲン酸が肝臓で代謝されカフェ酸とフェルラ酸に変化することが知られています。

サプリメントからの摂取

フェルラ酸は特に認知機能対策のためのサプリメントとして人気があります。「物忘れが気になる」「認知症の予防をしたい」「記憶力が気になる」などの悩みを持つ方は、食品だけでなくサプリメントを利用してフェルラ酸を効率的に摂取するのも良いでしょう。フェルラ酸の含有量は200mgのものから、中には500mg程度のものもあります。

過剰摂取は避け、パッケージに記載されている飲み方の指示通りに服用するようにしましょう。

フェルラ酸の摂取量の目安は?

認知機能の改善効果を期待する場合は、200mg程度を1日の摂取量の目安とするとよいでしょう。
フェルラ酸200mgで機能性表示食品の製品があるほか、100mgのフェルラ酸を含む食品を 1日2回 9か月間服用すると比較的軽度で高齢発症のアルツハイマー病患者で有意な症状改善効果が報告された例があります*⁹。
その場合、普段の食事だけでは200mgには届かないことが多いためサプリメントを服用することで効率よく摂取できます。また、フェルラ酸は摂取して数時間にはほぼ排出されてしまうため*¹⁰、サプリメントを服用する際はこまめに数回に分けて摂取するほうが良いと考えられます。

フェルラ酸の副作用は?

現在のところ、厚生労働省等からフェルラ酸の副作用の報告例はありません。
多くの食品に含まれ日常的に摂取していることから、過剰量を摂取しても副作用にはつながりにくい成分と考えられます。
しかしながら体質が合わない場合には消化器症状(便秘、頻尿、おなかの張り、おなかのゆるみ)や肌トラブル(湿疹、赤み)などが発生する可能性がありますので、サプリメント服用時やフェルラ酸配合化粧品を使用した際に気になる症状があらわれた場合には使用を中断し、医師の診察を受けるようにしてください。

フェルラ酸で生き生きとした毎日を!

フェルラ酸は、紫外線吸収効果やメラニン生成抑制効果があるために、古くから米ぬか由来の美白成分として化粧品に広く使用されてきた成分です。さらに近年では認知症の改善効果や生活習慣病の予防効果も期待できることが研究で数多く報告され、サプリメント成分としても注目を集めています。

フェルラ酸はさまざまな植物に含まれており、食品からも摂取できる成分であることから、生体親和性が高く過剰摂取による副作用の心配もほとんどないと考えられます。化粧品やサプリメントとして安心して取り入れることができるのは大切なポイントですよね。

これからの人生百年時代、健康に生き生きとした毎日を送りたい方は、フェルラ酸を意識して取り入れてみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
1) https://b2b-ch.infomart.co.jp/news/detail.page?IMNEWS4=3784112
2) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000034.000027263.html
(3) Yan J. J., Cho J. Y., Kim H. S., Kim K. L., Jung J. S., Huh S. O., Suh H. W., Kim Y. H., Song D. K. Protection against beta-amyloid peptide toxicity in vivo with long-term administration of ferulic acid. Br. J. Pharmacol. 133, 89-96, (2001).
(4) https://www.fancl.jp/news/pdf/20160419_ferurasansinkinou.pdf
(5) Jung E. H., Kim S. R., Hwang I. K., Ha T. Y. Hypoglycemic effects of a phenolic acid fraction of rice bran and ferulic acid in C57BL/KsJ-db/db mice. J. Agric. Food Chem. 55, 9800-4, (2007).
(6) Ardiansyah, Ohsaki Y., Shirakawa H., Koseki T., Komai M. Novel effects of a single administration of ferulic acid on the regulation of blood pressure and the hepatic lipid metabolic profile in stroke-prone spontaneously hypertensive. J. Agric. Food Chem. 56, 2825-30, (2008).
(7) S Kazuo, Positive Effects of Ferulic acid on developmental disorders by evaluating 50 patients prescribed Ferulic acid, 機能性食品と薬理栄養 2011 Dec;7(1):111
(8) Hudson E. A., Dinh P. A., Kokubun T., Simmonds M. S., Gescher A. C. Characterization of potentially chemopreventive phenols in extracts of brown rice that inhibit the growth of human breast and colon cancer cells. Cancer Epidemiol Biomarkers Prev., 9, 1163-70 (2000)
(9) 中村重信、佐々木健ら、Ferulic acidとgarden angelica根抽出物製剤ANM176TMがアルツハイマー病患者の認知機能
(10) 特定保健用食品評価書(ヘルシアコーヒー)、2009年7月

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