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シンエイクはシワ対策に効果的?気になる副作用も徹底解説

「シンエイク」という美容成分をご存じでしょうか。近年美容業界ではシワの改善効果があるのではと期待され、注目を集めている成分です。「シンエイク」という言葉は目にしたことがあるけれども、肌にどのような効果をもたらすのかを知らない方もまだまだ多いかと思います。また、蛇の毒由来の成分であることから、副作用や毒性も気になるかと思います。

この記事では「シンエイク」の開発背景やその効果、安全性について徹底解説します。

シンエイクとは

まずはシンエイクの開発背景や化粧品表示名称、構造式などについて詳しくご説明します。

医薬品にも活用されている“蛇の毒”から着想を得て開発

「シンエイク」とは蛇の毒による神経や筋肉の収縮作用に着想を得て、化粧品用途として開発された原料の名前です。化粧品表示名称は「ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド」と言います。

蛇は種類によっては猛毒を持ち、神経活動の停止、出血、筋組織の壊死など致死性を有するものもあります。蛇毒は古くから各地の先住民に矢毒として使われており、薬理学的作用といった学術研究も半世紀以上前から行われてきました*¹。そしてヒト体内での作用機序の解析が進んだ結果、毒の種類や投与量によっては疾病治療への有効性が見いだされ、中には医薬品の開発に活用された例もあります*²。

そのような医薬品での知見を化粧品に活用しようと開発されたのが「シンエイク」です。

「シンエイク」は化粧品のために開発された美容成分

開発の起点となったのは、蛇毒から単離された成分Warglerin 1が神経や筋肉の収縮活動を抑制する働きを持つという研究報告です*³。ある種の蛇は獲物を麻痺させることで狩りをしますが、毒の中のWarglerin 1という成分が麻痺させる作用を持つことがこの研究により明らかになりました。

シワとは顔の筋肉の収縮の跡が小さな線として残ったものなので、Warglerin 1が顔の筋肉の収縮を抑制する、つまりシワを減らす効果を持つのではないかという着想により開発がスタートしました。

Warglerin 1はタンパク質であり、複数のアミノ酸が連なった構造をしています。さらに分子中の一部のアミノ酸配列が特定の神経伝達を阻害することで神経・筋の収縮を抑制することも明らかとなっていたため*³、その活性部位のみを模倣し、人工的に合成されたのが「シンエイク」です。

蛇毒は何十ものアミノ酸が連なっていますが、シンエイクは3つのアミノ酸のみが連なった構造をしています。具体的にはアラニン・プロリン・ジアミノブチルベンジルアミドが結合しています*⁴。

シンエイクで期待できる肌への効果

ではシンエイクを肌に塗ることでどのような効果が期待できるのでしょうか。

抗シワ効果

上記の通りシンエイクは抗シワを目的として開発された原料ですので、もちろん抗シワ効果が期待できます。

DSM社の研究報告により、シンエイクを4%配合したクリーム、シンエイク無配合のクリーム、別のペプチド成分を10%配合したクリームを41-60歳の女性15人に1日2回28日間使用してもらい、使用前後のしわの深さおよび平滑さの評価を行いました。

その結果、シンエイク無配合のクリームや別のペプチド配合したクリームではシワの状態にほぼ変化はありませんでしたが、シンエイク配合クリームは目尻および額のシワの深さが有意に改善するとともに、肌の平滑性が有意に向上しました*⁵。

シワの予防効果

シンエイクはできてしまったシワを改善する効果だけでなく、シワの発生を予防する効果も期待できます。

DSM社が行った神経不随筋細胞を用いた試験では、シンエイクが筋肉の収縮を抑制する作用が報告されています。さらにこの作用は処置後1分後には始まり、数日間持続したことから、シンエイクの効果は即効性と持続性の両方を併せ持っていることが分かります。また、処置4日後には筋肉の収縮能力は元通りに戻っており、シンエイクは神経伝達をあくまで一時的に遮断するだけであることも確認されています*⁴。

顔の筋肉の収縮を抑える(リラックスさせる)ことで、日々の皮膚の伸縮運動を適度に抑制し、シワの発生を遅らせる効果が期待できるでしょう*⁵。

保湿効果

「シンエイク」には抗シワ作用を持つ「ジ酢酸ジペプチドジアミノブチロイルベンジルアミド」だけでなく、保湿効果が高い成分として有名な「グリセリン」も含まれています*⁶。
つまり、シンエイクを配合した製品にはグリセリンも含まれることになるため、保湿効果も期待できます。

シンエイクが「塗るボトックス」と言われる理由とは

またの名を「塗るボトックス」とも呼ばれるシンエイク。ここではその理由についてお伝えします。

「ボトックス」とは

シンエイクはその抗シワ効果の高さから、「塗るボトックス」と呼ばれることもあります。

そもそも「ボトックス」とは、ボツリヌス菌が産生する毒素のことであり、特定の神経伝達を遮断する効果があります。これを美容に応用したのがボトックス注射という施術です。

表情ジワが気になる部分にボトックスを直接注射することで、注射した部分の筋肉の動きを緩め、シワの予防と治療を行うことができます。

シンエイクがなぜ塗るボトックスといわれるのか

ボトックスと作用がほぼ同じであるため、「塗るボトックス」と呼ばれる側面もあります。

そもそもシワがどのように発生するかというと、まず顔の筋肉に対して神経細胞からアセチルコリンという神経伝達物質が放出されます。そして筋細胞の表面にある受容体がアセチルコリンを受け取ることで筋肉が縮み、この縮みが肌の上ではシワとなります。

シンエイクとボトックスはどちらもこの神経伝達を遮断するという点で同じ作用を持ちますが、どのように遮断するかは多少異なります。

ボトックスが神経細胞からアセチルコリンが放出されるのを直接抑える作用をもつ一方で*⁷、シンエイクは、筋細胞表面の受容体にフタをするような働きを持つことで抗シワ効果を発揮します。

シンエイクとアルジルリンとの違いとは

同じく「塗るボトックス」と呼ばれる美容成分として、「アルジルリン」という美容成分があります。
シンエイクと比較されることが多いため、ここではアルジルリンの効果やシンエイクとの違いについてもご説明します。

アルジルリンとは

アルジルリンは、化粧品表示名称では「アセチルヘキサペプチド-8」といいます。

ボトックス注射は危険性が考慮されて使用を禁止する国もあるという背景から、アルジルリンは注射ではなく塗るだけで同じ効果が出るようにボトックスの成分をもとに開発された成分です。
そのためアルジルリンもアセチルコリンによる神経伝達を遮断する作用があり、ボトックスと同様にアセチルコリンの放出そのものを抑制することでシワを抑制する効果を持ちます。

アルジルリンを配合したクリームの28日間の連用試験で抗シワ効果が確認されているため、アルジルリンにはシンエイクと同様の効果が期待できます*⁸。

あわせて読みたい

アルジルリンの効果は?

シンエイクとの具体的な違いとは

シンエイクが蛇の毒の構造の一部分を模倣して作られた一方で、アルジルリンはアセチルコリン放出を司る体内のたんぱく質の一部分を模倣して作られた物質です。

アルジルリンはシンエイクと同様に3つのアミノ酸が連なった構造をしていますが、構成されているアミノ酸の種類は異なります。具体的にはアルジルリンは、アルギニン・メチオニン・グルタミン酸というアミノ酸から作られています。

シンエイクの副作用や安全性は?

シンエイクは蛇毒を「模した」成分であり、蛇毒そのものではありません。蛇毒から毒性は失くしながらもシワ改善効果が表れる部分だけ切り取るように人工的に合成された成分です。
急性毒性試験、パッチ試験、眼刺激性試験、感作性試験、遺伝毒性試験など様々な試験が行われていますが、いずれの試験でも毒性は確認されていません*¹⁰。
シンエイクを配合したパックや美容液、クリームなどの化粧品はすでに世界中で多数販売されており、今のところ健康被害の報告もほとんどないことから、安全性の高い成分だと言えるでしょう。

ただし、念のため以下のような理由により皮膚刺激が発生する可能性があるため注意が必要です。

・化粧品自体が多数の成分の混合物であることから、シンエイク以外の成分によって皮膚刺激などが発生する可能性があります。

・シンエイクは4%の配合量でシワ改善効果が確認されていますが、市販されている化粧品にはそれよりも配合量が多いものもあります。原料メーカーが意図していない効果や副作用が出る可能性も考えられるため、そのような化粧品を使用される際には特に製品の使用方法を守ってご使用ください。

・ご自身の肌の状態によっても皮膚刺激などが発生する可能性があります。

心配な方は、使用前にご自身の肌に合うか試していただくとともに、使用後に皮膚刺激や赤みなど気になることが起こった場合には、直ちに使用を中止し医師の診察を受けるようにしてください。

シンエイクで思い切り笑おう!

シンエイクは蛇の毒が持つ麻酔効果から開発された、化粧品のために作られた成分です。

顔の筋肉をリラックスした状態にすることでシワの予防・改善効果が期待できます。たくさん笑ってきたからこそできてしまう表情ジワですが、表情ジワのせいで老けて見えてしまうのはとてももったいないですよね。

表情ジワが気になって思い切り笑えない、という方はシンエイクが配合された化粧品を使用してみてはいかがでしょうか。

【参考文献】
1) https://www.jstage.jst.go.jp/article/fpj1944/59/5/59_5_323/_pdf
2) Smith CG, Vane JR. “The discovery of captopril”. FASEB J. 17 (8): 788–9. (2003)
3) McArdle, JJ, T L Lentz, V Witzemann, H Schwarz, SA Weinstein & JJ Schmidt. “Waglerin-1 selectively blocks the epsilon form of the muscle nicotinic acetylcholine receptor.” J. Pharmacol. Exp. Therap. 289:543-550 (1999)
4) SYN®-AKE 原料カタログ: https://dermomanipulacoes.vteximg.com.br/arquivos/Syn_Ake.pdf
5) DSM HP: https://www.dsm.com/personal-care/en_US/products/skin-bioactives/syn-ake.html
6) https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=9206
7) Rossetto O, Seveso M, Caccin P, Schiavo G, Montecucco C. "Tetanus and botulinum neurotoxins: turning bad guys into good by research." Toxicon. 39 27-41 (2001)
8) Seng Han Lim, Yuanyuan Sun, Thulasi Thiruvallur Madanagopal, Vinicius Rosa, Lifeng Kang. “Enhanced Skin Permeation of Anti-wrinkle Peptides via Molecular Modification”. Scientific reports 8 (1): 1596.(2018)
9) https://www.cosmetic-info.jp/jcln/detail.php?id=8841
10) SYN®-AKE SDS:https://img1.wsimg.com/blobby/go/e510599d-093b-4227-b705-9012a985b457/downloads/sds-syn-ake.pdf?ver=1581271380308

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