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グリセリンの効果や安全性を解説 グリセリンフリー化粧品が話題の理由とは

最近、話題になっている「グリセリンフリー」の化粧品。
グリセリンは保湿効果が高く安価な成分であるため、昔から多くの化粧品に配合されています。この記事ではグリセリンフリー化粧品のメリット・デメリットを徹底解説します。

グリセリンとは

グリセリンは身体にもともと存在する天然の保湿成分で、肌の中には主に皮膚表面の皮脂膜や角質層などに存在しています。皮脂膜は、トリグリセリド・脂肪酸・スクワレンなどから構成されるのですが、トリグリセリドを皮膚常在菌が出すリパーゼという酵素で分解することで、脂肪酸と共にグリセリンを生成しています。

このようにグリセリンは身体の中にある成分と同じであることから、安全性が高く刺激性もほとんど報告されていません。化粧品に使用されているほかにも、医療の分野では軟膏剤や浣腸薬、目薬、脳浮腫などの治療薬として利用されています。また、グリセリンの名前はギリシャ語で「甘い」を意味するglykys(グリキス)に因んで付けられており、その甘みを生かして食品の甘味料としても使われています。

グリセリンの役割

ではグリセリンを肌に塗ると具体的にどのような効果が期待できるのでしょうか。
ここではグリセリンの肌への役割についてご説明します。

・高い保湿効果
グリセリンは多価アルコールの一つで、構造式の中に、水となじみやすい性質のある親水基(ヒドロキシ基)を3つもちます。
そのため、水分と吸着する働きが強く、高い保湿効果が期待できます。また肌にうるおいを与えて肌を柔らかくするエモリエント効果もあります。
一方で15%以上の高濃度で配合するとグリセリンが肌からも水分を奪って逆に肌を乾燥させてしまうため、化粧水などを手作りする際には注意が必要です。

・肌荒れを抑える効果
大人ニキビや肌トラブルの主な原因の一つに乾燥があり、グリセリンは肌の水分蒸散を防ぐことで乾燥による肌荒れを抑える働きがあります。保湿剤の中でもグリセリンは最も刺激が少ない成分の一つであるため、敏感肌や乾燥肌の方が使うと特に効果的です。

・使用感を向上させる効果
グリセリンは糖蜜状の液体でとろみがあり、一定の濃度以上で配合されると、肌の表面を覆うような被膜感を与えることができます。この被膜感があることで「保湿されている」と実感しやすくなるため、製品を使用する上での満足感につながります。

・発熱作用
グリセリンは少量の水と混ざると発熱する作用があります。化粧品成分表示でグリセリンが最初に記載されるような高濃度配合のものは、温感化粧品と言われ、毛穴を開いて美容液の浸透を良くしたり毛穴の中の汚れを落としやすくしたりする効果があります。また肌を温めることで血行を良くする作用も期待できます。

グリセリンフリーの化粧品がなぜ注目されるようになったの?

肌に良い成分として知られる「グリセリン」。ではなぜ、グリセリンの配合されていない化粧品が注目されるようになったのかについて説明します。

グリセリンの資化性試験

株式会社サティス製薬の研究報告で、保湿剤がアクネ菌の栄養源となるのかを確認するために、アクネ菌に各保湿剤を与えてその増殖率を測定しました(資化性試験)。その結果、保湿剤無添加の時と比べてグリセリンの場合はアクネ菌が約4倍に増殖することが分かりました。他の保湿剤が無添加のときと同様の増殖率であったため、グリセリンはニキビの原因であるアクネ菌を増やすという結果となり、グリセリンフリーの化粧品が注目を浴びるきっかけの一つになったようです。

そもそもアクネ菌とは?

サティス製薬の報告でも述べられていますが、ニキビの原因として知られる「アクネ菌」は、実は必ずしも悪い菌というわけではありません。

アクネ菌は、正式名称をPropionibacterium acnesといい、普段から皮膚に存在する皮膚常在菌の一種です。空気を苦手とする嫌気性菌のため、角栓によって毛穴が詰まり空気に触れない環境ができると一気に増殖し炎症を起こしてニキビの原因となります。

一方で、アクネ菌は皮脂を分解してグリセリンと脂肪酸やプロピオン酸を作り出します。そして肌にうるおいを与えながら肌のpHを弱酸性に保つことで、黄色ブドウ球菌や真菌(水虫・白癬菌・カンジダ菌)などの病原菌の繁殖を抑えてくれる大切な役割があります。

つまり、グリセリンがアクネ菌を増やすからと言って必ずしも悪いというわけではなく、すべての肌質の人でニキビの発症につながるとも言い切れないのです

健やかな肌ってどんな状態?

一般に、肌のバリア機能を高めると健康で美しい肌を維持することができます。バリア機能の向上には肌の水分量が維持できているかが非常に重要です。

通常、角質層には10~30 %の水分が含まれており、その水分含量が10%以下に低下すると肌荒れが起こりやすくなったり、光の透過率が低下して肌の透明感が減少したりすると言われています。

肌の水分には、細胞間脂質や天然保湿因子などと水素結合した“結合水”と、蒸発しやすい“自由水”の2種類があります。角質層の保湿効果を維持するには結合水の存在が大変重要ですが、天然保湿因子の中でもグリセリンは 2.2 g 水/g 乾燥重量と水をしっかり結合させる性質があると報告されています

グリセリンフリー化粧品を選ぶときの注意点

上記のように、健康な肌を保つためには、肌をしっかりと保湿することが重要です。
その点をふまえてグリセリンフリー化粧品を選択するメリット・デメリット、肌タイプ別の注意点などをご説明いたします。

グリセリンフリー化粧品のメリットとデメリット

【メリット】
アクネ菌の増殖を抑えることで繰り返すニキビの予防や治療に効果がある可能性があります。
また、グリセリンの配合量が多い化粧品は使用感が重くなるため、グリセリンフリーを選択することで肌のベタつきを軽減できる場合もあります。肌がずっとベタついた状態でいると肌にちりやホコリなどが付着しやすくなり、肌に刺激を与えて、ニキビや炎症・痒みが悪化してしまう原因になります。

【デメリット】
化粧品の保湿効果が落ちて、肌の乾燥や刺激を感じやすくなったり、肌のくすみが気になるようになったりする場合があります。また、グリセリンは低刺激&高保湿という性質の他に、原料コストが大変安価であるというメーカー側の開発上の利点もあります。グリセリン同様の保湿効果を他の保湿成分で代替すると製品価格が上がってしまったり使用感が落ちてしまったりする傾向があります。そのため、グリセリンフリーの化粧品は数が少ないです。

肌タイプ別の注意点

・乾燥肌、混合肌(インナードライ)の人
肌をしっかりと保湿する必要があるため、グリセリンフリーの化粧品をあえて選ぶことはおすすめしません。グリセリンフリーの化粧品を選択する場合は、他の保湿成分がきちんと配合されているか確認しましょう。肌のバリア機能を高めてくれるセラミドや天然保湿因子成分であるアミノ酸、その他ヒアルロン酸やヘパリン類似物質などの成分が代替成分としてよいでしょう。

・敏感肌の人
肌のバリア機能が低下している状態のため、乾燥肌の人と同様に、しっかりと肌を保湿する必要があります。また、肌が刺激を感じやすい状態であるため、刺激の少ない成分で構成されている化粧品を選択することが大切です。グリセリンは他の保湿成分と比較しても無刺激~刺激がほぼないことが報告されており、あえてグリセリンフリーの化粧品を選択しなくてもよいでしょう。

・ニキビ肌、脂性肌の人
肌のアクネ菌の増殖を抑えてニキビの悪化を防いだり改善できたりする可能性があります。またグリセリン入りの化粧品を使用していて肌のベタつきが気になる人も、グリセリンフリーの化粧品を試してみてもよいでしょう。
しかし、ニキビや脂性肌の中には、単なる“過剰な皮脂分泌”が原因ではなく、乾燥やターンオーバーの乱れが原因でできてしまっているものもあります。例えば、30代頃からできる大人ニキビや生理前の肌荒れがそれにあたります。その場合は、肌をしっかりと保湿することが重要であるため、グリセリンフリーの化粧品を選択する場合は他の保湿成分がしっかりと配合されているか確認しましょう。

配合表示を確認

グリセリンは多くの化粧品に配合されているため、全く入っていない製品を探すとなると選択肢が限られてしまいます。
ニキビやベタつきが気になってグリセリンを避けたい場合は、全く入っていない化粧品から探すのではなく、配合量を確認してグリセリンの少ない製品を選択するのも一つです。
一般的な化粧品には、全成分を配合量の多い順で記載する(配合成分 1%以下は順不同)という決まりがあります。配合表示3番目までに記載されている場合はグリセリンが高濃度で配合されている可能性が高いため、ニキビやベタつきが気になる方は避けると良いでしょう。

グリセリンの肌への役割を理解して、適切な化粧品選びを!

●グリセリンフリー化粧品は、メリット・デメリットを考慮して選択しましょう

【メリット】
・ニキビを予防したり改善したりできる可能性がある
・肌のベタつきを軽減できる場合がある

【デメリット】
・保湿効果が落ちて、肌の乾燥や刺激、くすみを感じる場合がある
・他の保湿成分で代替することで使用感が落ちたり、購入価格が上がったりする場合がある
・グリセリンフリー化粧品の数が少ない

●健やかな肌を維持するために保湿はきちんと行いましょう
・配合表示を確認し、代わりの保湿成分が十分に配合されているか確認する
・グリセリン「0」にこだわり過ぎず、配合表示の順番からグリセリンが「少ない」製品を選択する

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