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ワキガは、脇の下のアポクリン汗腺から分泌される無臭の汗が皮膚上の菌と反応することが原因で、独特の強い臭いを発生させる疾患です。男女問わずに発症する可能性があり、多汗症と併発することも珍しくありません。

発症の理由は両親からの遺伝や、ストレスや食生活、生活習慣の乱れなどさまざまです。年齢によるホルモンバランスの変化で一時的に発症することもあります。

この記事では医師の加藤成貴先生にご監修いただき、なぜワキガになるのかのメカニズムと、対策方法を詳しく説明していきます。

監修者

まゆりなclinic名古屋栄 院長

医師 加藤 成貴 先生

鳥取大学医学部医学科卒業。豊橋市民病院で初期研修を行う。名張市立病院の消化器内科、循環器内科入職後、内科指導医や循環器内科医長を務める。その後、大手美容外科に入職し宇都宮院の院長を務め、その後、大手美容皮膚科の名古屋院の院長を経て、2022年に名古屋市内でまゆりなclinic名古屋栄開院。内科、皮膚科、医療脱毛、美容皮膚科、美容外科、美容内科、美肌治療、薄毛治療、ダイエット治療など幅広く網羅し、美容・健康において信頼できる治療を提供している。

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【医人VOICE】まゆりなclinic名古屋栄

◆当コラムの掲載記事に関するご注意点
※本記事内でご紹介した治療機器、施術内容は、個人の体質や状況によって効果などに差が出る場合があります。記事により効果を保証するものではありません。記事内の施術については、基本的に公的医療保険が適用されません。実際に施術を検討される時は、担当医によく相談の上、その指示に従ってください。

ワキガ(腋臭症)とは

ワキガは、脇の下にツンとした独特な悪臭が発生する疾病です。「腋臭症」または「アポクリン汗臭症」とよばれ、よく混同される「多汗症」とは全く別物です。発症にはさまざまな原因がありますが、親から遺伝しやすいという特徴があります。

ワキガの厄介な点は、自分では臭いがわかりにくいことです。自覚症状がないまま、周囲の人を遠ざけてしまっている可能性があります。臭いは汗や皮脂によって強くなるため、運動後や夏場は、とくに注意が必要です。

ワキガの臭いのもとになるもの

ワキガの臭いの原因は、大きく3つあります。ワキにある汗腺の「アポクリン腺」から発生する汗と、皮脂腺から発生する皮脂はそれぞれ無臭ですが、皮膚表面の常在菌や雑菌と交わることで悪臭を発生します。

アポクリン腺からの分泌物

人間の汗を発生させる汗腺は、「エクリン汗腺」と「アポクリン腺」の2種類あります。 エクリン腺は全身に分布しており、分泌される汗のほとんどは水分で無臭です。

一方、アポクリン腺はワキや乳輪、外陰部などに分布する汗腺で、汗に脂肪酸やタンパク質、アンモニアなどの成分を含んでいます。アポクリン腺から発生する汗自体は無臭ですが、汗に含まれる脂肪酸が皮膚の常在菌によって分解され、悪臭を発生させます。

皮脂

皮脂もわきがの原因になります。皮脂は毛穴にある皮脂腺から発生し、皮膚表面の潤いを保つ役割や、雑菌の繁殖を防ぐ役割を担っています。

アポクリン腺から分泌される汗と同じようにもともとは無臭ですが、時間が経過すると皮膚の常在菌によって分解され、悪臭が発生します。

皮脂腺はアポクリン汗腺とつながっており、皮脂とアポクリン腺から発生した汗が混じり合って常在菌によって分解されると、ワキガ特有の悪臭の原因となります。

雑菌の繁殖

皮膚表面には、表皮ブドウ球菌・アクネ桿菌・黄色ブドウ球菌などのさまざまな常在菌が存在しています。常在菌自体に悪性はなく、皮膚の保護バリアを助けたり、有害な細菌の繁殖を抑えるはたらきをします。

しかし、皮膚表面に長時間汗や皮脂が残ると、雑菌が繁殖し、常在菌とともに汗や皮脂を分解して悪臭を発生させます。雑菌は湿度が高い環境でよく繁殖するので、ワキ毛が生えていると繁殖しやすくなります。

ワキガの発症要因は?

ワキガの発症要因は、先天的な遺伝と、後天的なホルモンバランスの影響、そして日々の生活習慣に分けられます。ワキガの遺伝やホルモンのはたらきは自分自身ではコントロールできないことですが、生活習慣は対策することが可能です。

遺伝

ワキガは遺伝することが科学的に証明されています。遺伝する確率は、両親の片方がワキガだと約50%、双方がワキガだと約80%です。

海外ではワキガの遺伝子を持つ人は多く、欧米人で約50%、アフリカ人はほぼ全員が持っているといわれています。日本人でワキガの遺伝子を持つ人は約10%と少ないことから、海外に比べてワキガ体質の人が目立ちやすいといえるでしょう。

アポクリン汗腺の数と大きさも遺伝で決まります。生まれつきアポクリン汗腺が多い人は、ワキガを発症しやすいといわれています。

性ホルモンの影響

ワキガは思春期以降に発症する人が多く、性ホルモンの影響が大きいと考えられています。生まれつきワキガの遺伝子を持っている人も、幼少期から発症することはほとんどなく、思春期以降に症状が出始めることが多いようです。

人間の体は思春期を迎えると成長とともに性ホルモンの分泌が増加し、体内のホルモンバランスが変化します。その影響を受けてアポクリン汗腺のはたらきが活発になったり、サイズが大きくなったりすることがあり、ワキガの発症につながるといわれています。

ストレスや疲れ

ストレスや疲労も、ワキガの発症に影響を与えるといわれています。体に過度なストレスがかかると、アポクリン汗腺が刺激され、発汗量が多くなります。ワキ汗が多くなると、自ずと臭いも強くなり、ワキガを発症する原因となります。

また、疲労が溜まったり寝不足の日々が続いたりすると、代謝が悪くなり体内に老廃物が溜まります。代謝の悪い人が汗をかくと溜まった老廃物が一気に排出され、汗の臭いが強くなります。

規則正しい生活リズムを保つことと、ストレスを溜めすぎないことは、ワキガの予防に重要です。

お酒やたばこの影響

お酒やたばこは、ワキガの臭いを強くすることがわかっています。アルコールやニコチンはアポクリン汗腺を刺激し、はたらきを活発にさせるといわれています。アポクリン汗腺のはたらきが活発になると、分泌される汗の量が多くなり、そのぶん雑菌や常在菌と反応して悪臭を発生させやすくなります。

適度な飲酒・喫煙ではそこまで影響はないかもしれませんが、ワキガの発症に関わる可能性があることは知っておくとよいでしょう。

偏った食生活

元来日本人にワキガの遺伝子を持つ人が少ないのは、野菜や魚を中心とした食生活に関係があると考えられています。しかし、近年は日本人の食生活が欧米化したことで、ワキガを発症する人が増加しています。

肉やジャンクフードなどのタンパク質や脂肪の多い食べ物を多く摂取すると、アポクリン汗腺や皮脂腺が刺激され、ワキガの臭いを発生させやすくなります。

ワキガの発症を防止するためには、栄養バランスの整った食生活を心がけることが大切です。

ワキガのセルフチェックの方法

自分の体臭は自分自身で認識することが難しいため、ワキガの臭いを自覚することは難しいといえます。自分にワキガの可能性があるかどうか気になった人は、今から説明するセルフチェックの方法を試してみましょう。

家族など親しい人に聞いてみる

自覚しにくいワキガの臭いは、人に判断してもらうのが1番手っ取り早い方法です。今までに誰かから体臭を指摘されたことがある人は、ワキガの可能性があります。

しかし、臭いは気になっていても人に言いにくい問題ですので、自分がワキガの臭いを発していても指摘されたことがないだけだったという人もいるでしょう。

自分がワキガの臭いがするかどうか気がかりだという人は、思い切って家族や親しい人に聞いてみるのも1つの方法です。ワキガに気づいていなかったり、反対に自分自身が気にしすぎていただけだったりするかもしれません。

耳垢が湿っていないかチェックする

アポクリン汗腺から分泌される汗はワキガの原因となりますが、アポクリン汗腺はワキだけでなく、耳の中にも存在します。耳の中には臭いの発生しないエクリン汗腺はなく、ワキガの原因となるアポクリン汗腺のみがあります。

耳の中にアポクリン汗腺が多い人は、汗によって耳垢が湿りやすいのが特徴です。耳のアポクリン汗腺が多い人はワキにも多く持っているため、ワキガである可能性が高いといえます。

下着が黄色く変色することがないか

ワキガの疑いがあるわかりやすい例として、白い肌着やシャツのワキ部分が汗で変色することが挙げられます。

ワキにはエクリン汗腺とアポクリン汗腺の両方があり、エクリン汗腺から出る汗は無色ですが、ワキガの原因となるアポクリン汗腺から出る汗は脂肪酸やタンパク質などの成分によって衣類を黄ばませることがあります。

したがってアポクリン汗腺から出る汗が多いワキガの人は、衣類が黄ばみやすくなります。

自分がワキガかどうか迷ったら医療機関に相談

クリニックによってはガーゼテストを行い、自分の臭いのレベルがどれほどなのか客観的に評価してもらえます。臭いのレベルに応じて適切な治療法も決まりますので、ひとりで悩まずワキガ治療をしっかり行っているクリニックにご相談するほうがいいでしょう。

日常生活でできるワキガの対処法

ワキガには、日常生活で簡単にできる対処法があります。ワキガの自覚症状がある人や、セルフチェックをしてワキガの可能性があるかもしれないと思った人は、以下で説明するいくつかの方法を試してみましょう。

まめに汗を拭きとる

1番簡単な対処法は、汗をこまめに拭き取ることです。アポクリン汗腺から分泌された汗と皮脂が長時間皮膚に残ると、常在菌や雑菌と反応してワキガの臭いが発生します。汗をかいたらすぐに拭き取ることで、常在菌や雑菌と反応することを防ぐことができます。

アルコールで拭いたり制汗剤を使う

アルコールでワキを拭いたり、制汗剤を使用したりすることも効果的です。アルコールでワキを消毒すると、ワキ汗を分解する雑菌の繁殖を抑えることができます。制汗剤はワキ汗の分泌を抑えられるほか、殺菌や抗菌の効果も期待できます。

医療機関で内服薬や外用薬を処方してもらう

医療機関を受診し、内服薬や外用薬を処方してもらう方法もあります。内服薬は汗の分泌を一時的に抑制する効果があり、ワキだけでなく全身に効き目があります。外用薬は、ワキに直接塗布して汗の分泌を抑制したり、臭いを発生する原因となる雑菌を殺菌・抗菌する効果があります。

根本的なワキガの治療法

ここまで紹介してきた対処法はあくまで臭いが発生するときの対症療法で、ワキガの根本的な解決にはなりません。

ワキガを完全に解決するためには、アポクリン汗腺を切除して減らしたり、ボトックスを打って発汗量を長期にわたって減少させたりするなど、美容医療での治療が不可欠です。

先に説明した簡単な対処方法だけでは不安な人や、ワキガをなくしたい人は、以下の治療方法を検討してみましょう。

ボトックス

ワキガの治療として1番手軽なのが、ボトックス注射です。ワキの下にボツリヌス製剤を注入して、ワキガの原因となるアポクリン汗腺からの発汗量を抑えます。

軽度のワキガに向いており、1回の治療で効果が4〜6ヶ月間持続します。10分程度で治療が完了するうえ、保険が適用できて費用も比較的安価な点が魅力です。

しかし、半永久的な効果はないため、継続して治療が必要です。1回の治療における注射の回数も多いため、注射が苦手な人にはあまり向いていません。

手術

ワキガを根本から治療する方法はアポクリン汗腺を切除する手術です。ワキの下を数センチ切開し、アポクリン汗腺を直接切除します。手術の際は局所麻酔を使用するため痛みはそれほど強く感じませんが、術後に患部を一定期間圧迫したり運動制限があったりするなど、ダウンタイムが発生します。

切除されたアポクリン汗腺が再生することはないため、効果は永久的です。重度のワキガに効果的な治療で、保険適用となりますが、切開による傷跡が残ってしまう点がネックです。 また、手術の合併症で皮膚が下部組織に定着しきれずに壊死し、真っ黒になってしまうことがあります。この場合、1~2カ月の間ほぼ毎日洗浄し、壊死組織を除去するという治療をしなければならないことがあります。もちろん、大きな傷跡が残りますし、つっぱり感が長期間残ります。

ミラドライ

近年注目されているのが、「ミラドライ」とよばれるマイクロ波による治療法です。ワキにマイクロ波を当てることで肌の内部で熱破壊を起こし、ワキガの原因となるアポクリン汗腺やエクリン腺を焼却します。破壊されるのは汗腺のみで、ほかの組織へのダメージはありません。

治療によって約7〜8割のアポクリン汗腺やエクリン腺を破壊することができ、再発の可能性もなく効果が半永久的に続きます。手術と異なり肌に傷跡が残らず、ダウンタイムもほとんど発生しません。保険適用外のため、治療費は高額ですが、半永久的に続くはっきりした効果と合併症の少なさを考えると、コストパフォーマンスは非常に良いと考えられます。

まとめ

規則正しい生活リズムと食生活を心がけることや、汗をかいたらすぐに拭き取ってワキを常に清潔にしておくことは、ワキガを防ぐことにおいて最重要です。

ワキガは自覚しにくい疾患ですが、セルフチェックを行うことで気付ける可能性があります。もし自分がワキガであるとわかったら、簡単な対処方法もありますが、根本的な治療には美容医療が適しています。治療の選択肢はいくつかあるので、メリットやデメリットを比較して、自分に合った治療法でワキガの悩みを解決していきましょう。

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