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レチノールの代替えに。植物由来の次世代成分 バクチオール

バクチオール bakuchiol

近年、注目を集めている『バクチオール』という成分をご存じですか?
シワなどの改善に有効であると言われるレチノール(ビタミンA誘導体)と同様の効果を期待できることから、“次世代レチノール”とも呼ばれています。
バクチオールを配合するコスメが急増する一方で、「効果がない」という声も!?

この記事では、バクチオールの効果や副作用のほか、効果を実感できるような正しい使い方、他の成分との併用についてなど、バクチオールの取り入れ方について徹底解説します。

今回、バクチオールについて教えてくれたのは

薬剤師 藤原 智沙恵 さん

研修認定薬剤師、1児の母。
メーカーで化粧品・医薬部外品の研究開発職に従事し、スキンケア製品や衛生用品の開発に携わる。
薬事申請や2度の特許出願なども経験した後に、調剤薬局の薬剤師へと転職。
薬局で様々な皮膚疾患をもつ患者さんの服薬指導にあたり、さらに多くの人に正しい情報を発信していきたいという思いを持ち、医療・美容分野を中心に執筆活動を始める。
薬剤師やメーカー勤務時代に取得した化粧品成分上級スペシャリストの資格を活かし、化粧品成分の安全性や美容サプリメントの正しい服用方法などを伝える記事の執筆・監修に積極的に取り組んでいる。

バクチオールとは

バクチオールは、アーユルヴェーダや中医学の治療で伝統的に使用されてきた薬草、オランダビユ(バブチ)の種子から抽出される成分です。
SDGs達成が世界のトレンドとなっているなかで、植物由来の成分でありながらレチノールと同様の作用をもつバクチオールは、次世代レチノールとして米国を中心に注目を集めています。

海外では2019年頃からバクチオール配合の化粧品が急速に増えている一方で、アジア圏ではまだ認知度が低く、美容大国である韓国でもバクチオール化粧品は少ないようです。
しかし、高いアンチエイジング効果が複数の臨床試験で認められていることから、今後日本でも流行する可能性が高く、それに伴いバクチオール配合の製品も増えていくと考えられます。

肌への働き

ヒトの肌でレチノールと非常によく似た遺伝子発現を誘導するバクチオール。
レチノールと同様のスキンケア効果が期待できるといわれていますが、具体的にどんな作用があるのかを解説します。

◆シワを改善する効果
小ジワと呼ばれる目元や口元にできる表皮のシワは、主に皮膚の乾燥が原因です。
バクチオールは肌の新陳代謝(ターンオーバー)を促進することで乾燥をやわらげ、小ジワを改善する作用があります。
また、バクチオールは、線維芽細胞を活性化させることで、肌のコラーゲンやヒアルロン酸の生成を促進する働きがあります。継続して使うことで肌がふっくらとし、肌にうるおいとハリを与えて、真皮にできた深いシワや肌のたるみを改善する効果も期待できます。

◆シミを防いだり、薄くしたりする効果
バクチオールには、メラニン細胞刺激ホルモンが活性化されるのを阻害する作用、メラニンを合成する酵素であるチロシナーゼの働きを抑える作用の、2つの作用で新しいシミができるのを予防する効果が期待できます。
また、抗酸化作用ももつことから、肌内部の活性酸素を除去し、肌の炎症を抑えて肌荒れやニキビ跡の色素沈着を抑えます
さらにバクチオールは肌のターンオーバーも促進するため、肌の奥深くにあるメラニンを押し出して、すでにできてしまったシミやニキビ跡を薄くする効果も期待できると考えられています。

◆ニキビや肌荒れを防ぎ、改善する効果
ニキビや肌荒れは、皮脂汚れやアクネ菌の繁殖などが原因で起こります。
バクチオールには、抗炎症作用、抗菌作用、抗酸化作用があるため、優れたニキビ治療効果を発揮します。
また肌のターンオーバーが活性化されることで、毛穴の詰まりをなくしニキビを予防する効果が期待できます。サリチル酸と併用することで、さらに効果的にニキビを予防・改善できるという報告もあります。

バクチオールとレチノールを比較した臨床試験

2019年にThe British Journal of Dermatology誌で発表された研究で、ヒトを対象に12週間バクチオールとレチノールを塗布して比較しました。
この研究では、44人の被験者に1日2回投与の0.5%バクチオール製品または、1日1回投与の0.5%レチノール製品のどちらかを投与しました。
その結果、両グループともにシワと色素沈着の改善がみとめられました。
両グループに統計的な有意差はなかったことから、バクチオールの1日2回の使用は、レチノールの1日1回の使用と同等の効果があることが示されました
さらに、バクチオールを塗布したグループは、レチノールを塗布したグループよりも肌の乾燥が少なかったと報告されています。

(参考)S. Dhaliwal, et al.,(2019). Prospective, randomized, double-blind assessment of topical bakuchiol and retinol for facial photoageing. British Journal of Dermatology,180(2),289-296.

バクチオールとレチノールの違い

同じような効果を示す2つの成分ですが、バクチオールはどのような点でレチノールと異なるのか、解説します。

◆天然の植物由来成分である
レチノールは、動物性食品から体内に吸収されるビタミンAの主要な誘導体の一つです。
一方、バクチオールはマメ科の植物オランダビユ(バブチ)から抽出した植物由来の天然成分です。そのため、バクチオールは「ビーガンレチノール」と呼ばれることもあります。

◆紫外線に強く、成分の劣化が起こりにくい
レチノールは、紫外線の影響を受けやすい成分であるため、レチノールが高濃度に配合されている製品は日中使用できなかったり、使用できても日焼け止めなどの紫外線対策が必須であったりと毎日のスキンケアで使いにくい部分がありました。さらにレチノールは酸化されやすいため、酸素と触れにくい製品形態である必要があったり、できるだけ短期間で使いきらなければならなかったりといった制限もありました。
一方、バクチオールは成分が安定しており、紫外線にも強いため、一日を通して時間帯を選ばず使うことが可能です。また成分の酸化や劣化が起こりにくいことから、安心して肌に使い続けることができます。

◆肌への刺激が低く、敏感肌・乾燥肌の人でも使える
レチノールは使い始めに、“A反応(レチノール反応)”という、肌の皮向けや赤み、かゆみ、刺激感といった症状が一時的に出る場合があります。そのため、敏感肌・乾燥肌の方はレチノールを使いにくいと感じることも多いようです。
しかしバクチオールは、そのような症状を起こすことはまれで、刺激が少なく、様々な肌質の方でも使いやすい成分になっています。
レチノールが肌に合わなかった方、レチノールの刺激に耐えられなかったという方でも安心して使える成分です。

◆妊娠中・授乳中でも安心して使える
レチノールは、妊娠初期(12週まで)に過剰摂取すると胎児に先天性奇形を引き起こす可能性があるため、妊娠中の取りすぎには注意した方がよいといわれています。外用によるレチノール塗布は、成分が血中に移行する量がごくわずかであるため問題ないとはいわれていますが、医療機関などで使用される高濃度レチノールは安全のため妊娠中・授乳中は避けた方が無難です。
一方で植物由来成分であるバクチオールは、現在のところそのような報告はなく、妊娠中・授乳中でも安心して使用できる成分であるといわれています。

デメリットはあるの?

レチノールと比較して使いやすい成分であるバクチオール。しかし、デメリットもあります。
ここではバクチオールを正しく使用するためにも、バクチオール製品を使用する際の注意点を解説します。

◆効果を実感するまでにかかる期間が長い
バクチオールはレチノールと比較すると効果を実感するまでの期間が長いことがわかっています。長期スパンでの継続が必要であることを理解し、「効果がない」と感じても最低でも1~2ヶ月以上は根気よく続けるようにしましょう。
またバクチオールの推奨濃度は0.5~2%です。濃度が高すぎても刺激を感じる原因になりますが、推奨濃度をきちんと配合している化粧品を使わないと効果を実感できないままやめてしまうことにつながりかねません。バクチオール製品を選ぶときは配合濃度も確認しましょう。

◆植物アレルギーを起こす可能性がある
肌にやさしく刺激が少ないといわれるバクチオールですが、植物由来成分であることから使用により植物アレルギーを引き起こすことがあります
バクチオール製品を使用する際は、必ずパッチテストをして問題ないか確認してから使用するようにしましょう。肌に赤みや刺激を感じた場合はすぐに洗い流してください。

◆臨床試験データが少ない
スキンケア成分としてのバクチオールの歴史は浅く、長期間肌に使用した時のバクチオールの安全性については十分なデータがそろっているとはいえません。そのため、確率は低いですが未知の副作用が起こる可能性も否定できないでしょう。その点、レチノールは長年スキンケア製品に使用されてきた実績もあり、膨大な臨床試験データがあるため、安心して使用することができます。

他の成分との併用について

◆ハイドロキノンの併用は?
併用しても問題ありません。レチノールと同様にバクチオールは肌のターンオーバーを活性化させる作用があります。バクチオールが肌の奥深くにあるメラニンを表面へ押し出して、ハイドロキノンが新しいメラニンが生成されるのを強力に抑えるため、美白の相乗効果が期待できます。
併用する際は必ず日焼け止めを塗りましょう。

◆レチノールの併用は?
バクチオールは抗酸化作用をもつため、併用することでレチノールの酸化や紫外線による分解を防いで成分を安定化させることがわかっています。
併用によりバクチオールがレチノールの効果を高めるため、エイジング対策やニキビケアにより高い効果が期待できるでしょう。

◆ビタミンCの併用は?
併用しても問題ありません。レチノール併用のときと同様、バクチオールの抗酸化作用でビタミンCの酸化や劣化を防ぐ効果が期待できます。

バクチオールとレチノール、目的に合わせて使い分けを

バクチオールとレチノールはどちらも高いアンチエイジング効果が期待できることがわかりました。目的や肌質に応じて両成分を使い分けると良いでしょう。

~バクチオールがおすすめの人~
・敏感肌、乾燥肌の人
・過去にレチノール製品を使用して刺激感を感じた人
・長期スパンで継続できる人
・日中、紫外線に当たる時間が長い人
・妊娠中、授乳中でもエイジング対策をしたい人

~レチノールがおすすめの人~
・肌が強い人
・速効性を期待する人
・レチノールの副反応(A反応)が気にならない人
・新しいスキンケア成分に抵抗のある人

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