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美しい肌や髪の維持には欠かせない?ビオチンの効果や副作用、効果的な飲み方を解説

肌や爪、粘膜などの健康維持に欠かせない栄養素である「ビオチン」。
美容に関心が高い人の中には、白髪や抜け毛が多いときの育毛対策としても、ビオチンの健康食品が効果的だという情報を耳にしたことがあるかもしれません。
では、実際ビオチンに効果はあるのでしょうか?効果的な飲み方や副作用はあるのでしょうか?そんな疑問を徹底解説します!

今回、ビオチンについて教えてくれたのは

薬剤師 藤原 智沙恵 さん

研修認定薬剤師、1児の母。
メーカーで化粧品・医薬部外品の研究開発職に従事し、スキンケア製品や衛生用品の開発に携わる。
薬事申請や2度の特許出願なども経験した後に、調剤薬局の薬剤師へと転職。
薬局で様々な皮膚疾患をもつ患者さんの服薬指導にあたり、さらに多くの人に正しい情報を発信していきたいという思いを持ち、医療・美容分野を中心に執筆活動を始める。
薬剤師やメーカー勤務時代に取得した化粧品成分上級スペシャリストの資格を活かし、化粧品成分の安全性や美容サプリメントの正しい服用方法などを伝える記事の執筆・監修に積極的に取り組んでいる。

ビオチンとは

ビオチンとは、水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。食事から摂取する以外にも、ヒトの腸内で善玉菌によって合成することができます。
欠乏症を起こすことがまれであるため単に「ビオチン」と呼ばれることが多いですが、以前は「ビタミンB7」や、皮膚の炎症を予防する効果があることからドイツ語の皮膚(=Haut)にちなんで「ビタミンH」と呼ばれていました。

ビオチンの働き

ビオチンは三大栄養素(糖質・脂質・タンパク質)が体内でエネルギーに変換される際に、それぞれの代謝をサポートする重要な役割を担っています。

糖の代謝</b.

ビオチンは、補酵素として糖の代謝に関わっています。
糖質(炭水化物)は、体内で消化されてブドウ糖まで分解された後、体を動かすエネルギー源として利用されます。ビオチンは糖質の分解を助けることで血糖値を調整する働きがあります。
また、ブドウ糖からエネルギーを生成する過程では、燃えカスとして乳酸が発生します。​この“乳酸”は、体の中にたまると筋肉痛や疲労の原因になります。ビオチンには、乳酸をブドウ糖に戻すのを助ける働きもあり疲労感や筋肉痛を改善することができます。

脂質の代謝</b.

ビオチンは脂質の主成分である脂肪酸の代謝に関わっています。皮膚の細胞間脂質や脂肪酸は角質層の重要な構成成分です。さらに、脂肪酸は炎症性物質が体内で過剰に作らないようにコントロールする役割もあります。
ビオチンは、脂肪酸の産生を助けることで、健康な角質層を作って肌のバリア機能を高め、さらに免疫機能を正常化してアレルギー症状を抑える働きをします。

タンパク質の代謝</b.

ビオチンは体内でタンパク質の元になっているアミノ酸の代謝を助けます。
ヒトの体の皮膚や髪の毛、粘膜、筋肉などは、​アミノ酸が集まってタンパク質を合成することでできています。例えば肌の弾力を維持するコラーゲンや髪の毛を作るケラチンもタンパク質から作られているのです。
ビオチンは体内でアミノ酸の代謝を促進する酵素“カルボキシラーゼ”を助けることでタンパク質の合成をスムーズにし、皮膚や髪の毛の生成をサポートします。

肌への効果

ビオチンを摂取することで、肌の新陳代謝が高まるため、ニキビや肌荒れの改善が期待できます。健康な角質層が作られるため肌のバリア機能が高まります。ビオチンは、皮膚の炎症やかゆみの原因となるヒスタミンという物質の産生を抑える働きがあるため、アトピー性皮膚炎の治療にも有効です。粘膜の強化も期待できるため口内炎の改善効果もあるでしょう。

髪への効果

頭皮環境が整い、髪に栄養が行き届きやすくなるため、白髪や脱毛、薄毛に効果が期待できます。しかしビオチンを多くとるほど育毛効果が高まるわけではありません。なぜなら老化やストレス、ホルモンバランス、遺伝などの他の要因が絡んでいる場合があるからです。
また、爪も髪の毛と同様にケラチンを主成分としてできており、ビオチンを取ることで丈夫な爪を作る効果が期待できます

ビオチンが不足するのはどんなとき?

ビオチンは、含まれている食品が多いことや腸内細菌によって産生されることから、通常の食生活をしていれば、不足することはまれであると言われています。しかし、生活習慣や体質によってはビオチンが不足してしまう可能性があります。
以下のケースに当てはまる人は特に注意が必要です。

ビオチンが不足する身近な生活習慣

ダイエットや偏食で極端な食事制限をすると、摂取できる量が足りずに体内でビオチンが欠乏する場合があります。 また、過度な喫煙や飲酒も、ニコチンやアルコールを体内で消費する際に多量のビオチンが消費されるため、ビオチンが不足してしまう可能性があります。

こんなときにもビオチンが不足する可能性が?!

慢性的な下痢や抗生物質を長期間飲んでいるとき

ヒトの腸内では善玉菌や悪玉菌などの腸内細菌がバランスを取り合って腸内フローラを形成しています。善玉菌は腸の中でビオチンを作ることが出来ますが、逆に悪玉菌はビオチンを壊してしまいます。
慢性的な下痢が続いたり、抗生物質を長期間服用したりすることで、腸内細菌のバランスが崩れて悪玉菌が増え、ビオチンが不足する原因になります。

生の卵白を多量に長期間にわたって摂取した場合

卵白中のアビジンという物質がビオチンと結合して、消化管からのビオチンの吸収を妨げてしまうことがわかっています。ただし欠乏症が報告されたのは生の卵白を1日5~6個以上食べ続けた場合なので過度に心配する必要はありません。また、卵を加熱すればアビジンが変性するため、欠乏する可能性はさらに低くなります。

抗てんかん薬を長期間にわたって使用している場合

カルバマゼピンやフェニトインなどの抗てんかん薬を長期間服用している患者さんは、ビオチンの吸収が阻害されたり尿からの排出が促進されたりすることで、ビオチンの血中濃度が低下するという報告があります。

乳児が治療用の特殊粉ミルクのみを摂取している場合

日本では2014年まで粉ミルクにビオチンを添加物として使用することが認められていなかったことから、現在でもビオチンがほとんど含まれていない粉ミルクが多くあります。
そのため、粉ミルク(特に治療用の特殊粉ミルク)のみを栄養摂取源としていた乳児に、ビオチン欠乏による皮膚炎などの発症が報告されています。

ビオチンが不足したらどうなるの?

ビオチンが不足すると、皮膚炎や口内炎、白髪、脱毛、食欲不振や吐き気、疲労感やうつ症状などの原因になります。ひどい場合はけいれんや乳酸アシドーシスを引き起こす可能性もあるため、注意が必要です。

ビオチンの上手な取り入れ方

ビオチンを取り入れる基本は、バランスの良い食事です。
「日本人の食事摂取基準」によると、成人(18~64歳)のビオチン摂取目安量は、およそ50μg(マイクログラム)/日とされています。
ビオチンを効果的に取りたい方は、ビオチンが多く含まれる食品やサプリメントを試してみるのもいいかもしれません。肌の炎症やアレルギー症状が強い方は、自己判断で対処するのではなく、医師の指導の下で処方薬としてビオチンを服用するのが良いでしょう。

ビオチンを多く含む食品は?

ビオチンは特に卵、キノコ類、肉類(特にレバー)、ナッツ類、豆類、貝類などに多く含まれると言われています。

以下にビオチンが多く含まれる食品の例をあげます。 一般的な食品スーパーで購入でき、調理しやすく、日常的に摂取しやすい食品をまとめていました。

食品名 ビオチン量(㎍) 食品の目安量
生卵(卵黄) 60 Mサイズ1個
生卵(全卵) 25 Mサイズ1個
乾燥シイタケ 35 大きめサイズ1個
まいたけ 25 1パック
鶏レバー 230 100ℊ
豚レバー 80 100ℊ
落花生 90 10ℊ
納豆 10 1パック
あさり 25 10

サプリメントで摂取するときのポイントは?

サプリメントを使用するときに大切なのは、ビオチン単独のものではなく、他のビタミンも含有されたマルチビタミンのものを選ぶようにしましょう。
特にビタミンB群は体内では相互に補い合うように働くため、他のビタミンB群とビオチンを併用するとより高い効果が期待できると考えられます。
また、ビオチンは一度にたくさんの量を飲んでも吸収されずに摂取後2~3時間ほどで尿と一緒に排泄されます。そのため、1日1回よりも数回に分けて、こまめに飲むのが理想的です。
さらに髪や肌への美容効果を望む場合は、即効性は期待できないため少なくとも1~2ヶ月は続けることが大切です。

ビオチンは病院でも処方してもらえる?

ビオチンは皮膚の炎症を抑える効果があるため、病院で治療薬として処方される場合があります。適応症は、湿疹(アトピー性湿疹も含む)、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、ニキビなどの皮膚疾患の他、ビオチン欠乏症に対しても用いられます。
また、一部の医療機関(主に皮膚科)では、掌蹠膿疱症などの治療として、ビオチン・酪酸菌・ビタミンCを併用する「ビオチン療法」という治療を行っています。
掌蹠膿疱症は、ビオチンが欠乏することによる免疫異常で作られた抗体(IgA)が手のひらや足の裏の表面の分厚い皮膚細胞が沈着して起こる疾患です。「ビオチン療法」は、腸内環境を整える酪酸菌と、免疫調節作用のあるビタミンCをビオチンと一緒に取ることで症状を改善する効果が期待できます。

しかしサプリメント同様に即効性はなく、長期スパンで治療を継続することが重要です。
また、治療を希望する場合は、必ず病院を受診し医師の指示に従って行うようにしましょう。

ビオチンの副作用や注意点

ビオチンの副作用や過剰症は?

一般の健康な人がビオチンを服用したことによる副作用や過剰症についての報告はほとんどありません
ビオチンは水溶性ビタミンであり、一度に多量に摂取しても不要な分は尿として排泄されます。「日本人の食事摂取基準(2020)」においても、ビオチンの耐容上限量の設定はなしとされています。

ビオチンを服用しているときに注意することは?

比較的安心して服用できるビオチンですが、妊娠中や病院で検査を受ける場合には注意が必要なことがあります。

妊娠している方のサプリメントによるビオチンの摂取について

妊娠中にビオチンが不足すると赤ちゃんの発育異常が報告されている一方で、動物実験においては極端な過剰摂取により胎盤や赤ちゃんに影響があったという報告もあります。
一般に妊娠中は必要な栄養摂取量も多くなりますが、ビオチンの場合は成人女性の目安量50㎍に付加量を2㎍とした合計52㎍が妊婦の目安量になります。
そのため、妊婦だからといって摂取量を過度に増やす必要はなく、通常の食品をバランス良く食べるのが安全な取り方だといえるでしょう。妊娠中・授乳中のビオチン摂取にあたって、不安がある方は医師や薬剤師に相談しましょう

ビオチンを飲んでいるときの病院での検査について

ビオチンは、卵白などに含まれるアビジンと非常に高い結合能を持つことから、この特性を用いて臨床検査法としても利用されています。
例えば甲状腺ホルモンや女性ホルモンの測定をする検査で利用されており、サプリメントを飲んで体内に多量のビオチンがあると、その影響で検査値が不正確になる可能性があります。実際に、ビオチンを多量に摂取されていた患者さんが検査でバセドウ病様の検査所見を示したとの臨床報告が出ており、厚生労働省や医師会から注意喚起が出ています。
病院で検査を受ける場合は、ビオチンを飲んでいることを必ず医師に伝えてください。

まとめ

●ビオチンは水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種です。
●食事から摂取する以外にも、ヒトの腸内で合成することができるため、通常の食生活をしている人では欠乏症が起こる可能性は低いです。
●ビオチンの効果としては、白髪や薄毛の改善、ニキビや肌荒れの改善、爪を丈夫にする効果、アレルギー症状(花粉症やアトピー性皮膚炎など)の緩和、疲労回復などが期待できます。
●ビオチンが不足すると、皮膚炎や脱毛、食欲不振や吐き気、うつ症状などの原因になります。
●慢性的な下痢などで腸内細菌のバランスが崩れていたり、卵白を多量に摂取したりするとビオチンが不足することがあります。
●ビオチンを効果的に取り入れるためには、バランス良く他のビタミンB群と一緒に取ること、一度に大量摂取しないこと、腸内環境を整えることがポイントです。

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